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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
第二章:三人の老婆と死者の都
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第088話 「ケイオスと三人の老婆」

 時は少し溯る。

 ケイオスが勇者から逃げて、真っ暗な夜の森の中に逃げ込む少し前。

 三人の老婆が闇の中で、幻術の灯りを中心にグルグルと手を取り合って踊っていた。


「次に三人で会うのはいつが良いだろうね?」

「もうすぐさ。目覚めた闇が魔獣を追って、光に負けて逃げた頃」

「じゃあもうすぐだね」

「何処で会う?」

「もちろん森で」

「あの者に会おう」

「あの者の名は」

「ケイオス」

「綺麗は汚い。汚いは綺麗。澱んだ大気と霧の中、飛んでいこう」


 そう言うと、一人また一人と姿を消していく。最後の一人が消えた時、幻の灯りもフッと消え失せた。

 しばらく後。

 今、ケイオスは三人の魔女と相対していた。



□■□■□■□■□■□■□■□■



(ケイオス視点)


「ケイオス様万歳!」

「魔王様万歳!」

「魔王ケイオス様万歳!」


 ・・・・・・何だこの汚らしい老婆共は。ボロボロの黒いローブを着て、痩せ細った骨と皮ばかりの身体をしている。白髪は汚らしく伸び放題だ。見るだけで加齢臭がする。

 だが何やらめでたい事を言っているじゃないか。話が通じるか分からないが、声を掛けるくらいはしてやろう。


「何者だ? 私を助けたのはお前等か?」

「そうでございますよぉ」

然様さようでございます」

「私めが間に割って入りました」


 老婆達は一斉に答えるので、ちょっと煩わしい。


「そうか、危ないところだった。礼を言う」


 すると隣に居た老婆が金切り声を上げた。


「待って下され。間に入ったのは私でございます! おのれ、手柄を横取りするんじゃないわ!」

「ヒッヒッヒッ! どうせ儂等の見分けなんぞつかんわい」

「こんな時にやめな! ケイオス様が困惑するじゃろが!」


 ええいうるさい。ちょっとどころではなく煩わしいな。私は眉根に皺を寄せた。

 確かに困惑する。三人共、ソックリな見た目をしているのだ。全員が真っ黒でボロボロのローブを着ていて、顔も見分けがつかない程似ていた。全員が痩せぎすで節くれだった身体。特徴的なワシ鼻だった。


「分かった分かった。もういい。それについては三人に礼を言おう。だが、お前等は何者だ? 私には助けられる心当たりが無い。なぜ私の名を知っている?」


 私はゴチャゴチャ言う老婆共を仲裁するようにそう言った。


「ああ、大変失礼しました。私めの名はイービルでございます」

「儂はイーヴォルじゃよ。今後とも宜しく」

「うちゃあイーベル。魔王ケイオス様ばんざぁい!」


 全部同じ発音に聞こえるぞ。これじゃ見分けがつかないばかりか、名前もよく分からない。


「何だって? 名前が似ていて分からん」

「ああ、私めはイービルで」

「イーヴォルじゃよ」

「イーベルでぇす」

「もういい! 何度聞いても分からん! 名前より、お前等の目的は何だ! あまりふざけるなら、ただではおかんぞ!」


 老婆とて私を舐めて掛かるなら、やらねばならないだろう。どうせただの人間だとは思えん。飄々とした態度からは、攻撃してすぐ死ぬような風にも感じられなかった。


「あな恐ろしや! お怒りならば申し訳ありませぬ!」

「儂等はただ、未来の魔王様をお迎えに上がったまででございます」

「魔王ケイオス様ばんざぁい!」


 ふむ・・・・・・予想外にすぐ謝罪するとは殊勝な心掛けだ。それに、魔王だと? コイツ等は何か知っているのか。


「何だその魔王様呼ばわりは。どういう訳だ?」

「ああケイオス様。貴方は魔王になられるお方」

「幾千、幾万という魔界の民の王!」

「魔王ケイオス様ばんざぁい!」


 なるほどそうか。さてはコイツ等、予言の魔女の類だな。

 魔女は各地に様々な伝説があると書物で読んだ事がある。中でも有名なのが予言だ。魔女の予言は必ず的中するという。

 出世と富をほしいままにし、領地を得て貴族になった者の話など有名だ。

 

「フン。お前等、予言の魔女か。すると私にもついに躍進やくしんの時が訪れたようだな」


 思わずニヤリと口元に笑みがこぼれる。これは気分が良い。

 もちろん悪魔との契約のように、気を付けなければ足元をすくわれる危険性もある。

 あの領地を得て貴族になった者は、予言通り確かにその後、王にまで成り上がった。

 しかし先王から王位を簒奪さんだつした事で、逆臣ぎゃくしんの汚名を被り討たれてしまった。決して手放しに魔女を信じてはいけない、という逸話いつわだ。

 だがまあ知識あるこの私に限って、その心配はあるまい。聡明な私なら、見え透いた罠になど掛からない。このリスクは回避可能だ。

 そしてリスクがある分、リターンが大きい。コイツ等を利用して、必中の予言を味方に付けてやろうではないか。



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