表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
86/94

第086話 「天罰」

 マデリンが来る少し前、尖塔最上階の室内にて。


「ほら、これで文句は無いだろう?」

「あ、ありがとうございます」


 近衛兵達を全員外に出して一対一となったエリクは、マコに言って聞かせた。


「いいか。君が逃亡を企てようと、僕なら一人で取り押さえられる。おかしな真似はするなよ?」


 少しの油断も無い。マコは確かに見た目の可愛らしい娘であったが、エリクは全くそこに興味を抱かなかった。

 本当にただの魔物と変わらない、と考えていた。

 太陽神ヘリオンの使徒、勇者たるおのれの責務を全うするだけだ。

 ヘリオンは魔物を斬れとエリクに伝えてきた。だがそれはお待ち下さい、と彼は神に許しを乞うたのだ。

 取り調べて人に害はないと判れば、殺さなくて済むよう神に上申するつもりなのである。

 

(僕はロジャー君に約束をした。この娘に危害を加えない)


 エリクは約束を反故にしたくはなかった。

 神の前に全てつまびらかにした上で、この娘が許される事を望んでいた。


「これ、捲ってもらえるかな?」


 見た目は見目麗しい淑女だ。検分の為に膝上辺りまでとはいえ、スカートを捲って持たせておくのはどうにもいかがわしい。

 人払いしておいて正解だった。

 そうして触手の検分が始まる。


「んっ! んっ!」


 マコは足を片側六本の触手状にしたり、戻して普通の足にしか見えないようにしたりして見せた。

 一瞬で滑らかに変化する完成度の高い擬態に、エリクは驚嘆した。


「ところで、さっき君は一本ずつ全て機能があると言っていたね。それはどんなものなんだ?」

「あ、えっとそれは・・・・・・」


 マコはこれが捕食孔で、これが排泄孔で、と説明を始めた。


「ほう。そんな機能があるのか。ちょっと触るよ」

「あっ、はい。どうぞ」

「これだけちょっと形状が違うな。これはどんな・・・・・・」


 エリクは説明を聞きながら、一本触手を手に取った。


「あっ、それは! ひゃうん!」

「どうした? 変な声を上げるなよ。おかしな感じになるじゃないか」


 ちょっと動揺しながら言うと、マコが答えた。


「は、はい・・・・・・で、でも」


 どうにも色っぽい仕草をする。

 その様子を見たエリクは、厳しい表情になった。


「僕を篭絡ろうらくしようとしても無駄だぞ。さっき言った通り、僕は君を魔物だと思っている。妙な気を起こすなよ」


 この娘が隙を突いて攻撃してきたら、不本意でも斬らなければならなくなるかも知れない。

 そうしたくはない為エリクは釘を刺した。つい触手を握る手に力も入る。

 するとマコが喘ぐような声で言った。


「いやっ! あ、あのっ! その触手は触っちゃダメなやつですっ!」

「何? これが?」


 どうやら今握っている触手は、触ってはダメらしい。


「以前はこれを伸ばして、攻撃してきたと思うが・・・・・・」

「いえっ、どれも同じに見えると思いますけど、その一本だけは使っていないんです。それは用途が違って」

「何? ではこの触手には、他に特殊な機能があるのか?」


 エリクが触手をムニュッと握ると、マコが顔を真っ赤にしながら目をギュッと瞑って言った。


「あんっ! いやっダメッ! あります! 機能、ありますけど、それは・・・・・・言えませんっ!」


 その様子を見て勇者はハッとなった。


「ま、まさかこの触手は。見たり触ったりする行為自体が、君にとって恥ずかしかったりしないだろうな?!」


 耳まで赤くなったマコが、頭を激しく縦にコクコクと振った。


「もしやコレは、性・・・・・・!」


 勇者がバッ!と手を離した。

 ただの恥ずかしがり屋なのかと思っていた。だが違ったようだ。

 自分は今もしかすると大変な事をしてしまったんじゃないか、と大汗を掻き始める。

 そんな時に扉を勢いよく開く音がして、マデリンが入って来た。


「あらあらあら~。イチャイチャやってるようね? エリク」


 マデリンはニタニタと満面の笑みを浮かべながら問い掛ける。


「いや! 誤解だ! 僕は何も!」

「可愛い娘にスカート捲らせて、何をやってたのかしら?」


 振り返ると、マコがまだスカートを膝上までたくし上げて立っていた。


「ああッ! 君ッ! もういい! 服を降ろせ!」


 エリクは慌てふためいて叫んだ。


「アナタ今なにをやっていたのと聞いているんだけど? エリク」

「ぼ、僕は何もやましい事はしていない! マンイーターの触手を検分していただけだ!」


 マデリンが今まで見た限りでは、エリクがここまで狼狽するのは初めてだった。

 表情が引き攣って、大量の汗を掻いている。

 強大な悪魔と戦っている時ですら、こんなに取り乱したエリクは見た事が無い。


「あら~? 本当かしら。スケベ心が無かったって、天地神明に誓って言える?」

「スケッ?! そんなもの、ある訳が無いだろう! 神に誓って! 僕はただ・・・・・・」


 パァン!


 突然耳をつんざくような破裂音が聞こえた。

 急に空気中から電光が走って、エリクに小型の雷が落ちたのだ。


「ウッ!」


 魔法耐性レジストがあるエリクが、痛いと感じる程の威力であった。


「何よ今の?! もしかして天罰じゃないの? あはは! 嘘ついたから! あははは!」


 神の使徒にガチで天罰が下るところを見てしまった。マデリンは爆笑する。


「ああ! 神よ! そんなまさか! 僕は決してそのような事は!」


 エリクは片膝ついて必死で誤解ですと神に祈り、申し開きを始めた。


「そのような事って、どんな事なのよ? えぇ? 言ってみなさいよエリク」


 その祈っているすぐ側で、マデリンが心を掻き乱す。


「スケベ心でいかがわしい事をしていたんでしょ? 神様にそう報告しなさいよ」

「クッ! もういい! 取り調べは終わりだ!」


 エリクは平静を保てなくなって祈るのをやめた。

 勢いよく立ち上がると、逃げるように扉へと歩いて行く。


「あらあらどうしたの~? 都合が悪くなったから逃げるのかしら~?」


 マデリンが歩いてその後を追う。


「逃げてなんていない!」


 怒りながら逃げていくエリク。

 二人はツカツカと歩いて部屋から出て行ってしまった。

 

「エリクってああいう娘が好みだったのね~!」

「うるさい! そんな訳無いだろ! 何を言ってる!」


 階段を下りて行く足音と、慌てたような怒鳴り声が階下から聞こえてくる。

 マコは少しだけ吹き出して、笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ