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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
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第085話 「マンイーターの取り調べ」

 ここはウェストリコ城。その中でも最も高い尖塔の一室である。

 エリクに連れて来られた魔物の娘「マコ」と名付けられた女の子は、ここにずっと閉じ込められていた。

 そこに十名、城の近衛兵を引き連れた勇者エリクがやって来た。


「僕は君を魔物だとしか思っていない。君の安全性を確認しないと、ここから出す訳にはいかないんだ。良いね?」


 エリクはマコを取り調べる為にここに来たのだ。

 

「君の足の触手は脅威だ。普通の人間なら簡単にやられてしまうだろう。その足はどうなっている?」


 マコは口頭で色々な質問に答えた。触手の特徴を説明していく。

 それによると今足に見えているものは、擬態した触手であるという。

 触手は片足で六本あり、色や形など見かけを自由に変えられる。

 そして一本ずつ全てに役割があるとマコは言った。

 両足をぐにゃりと変形させてバラして見せる。十二本の触手の内、一本を前に出した。


「例えばこの触手には先端に捕食孔があります」

「ほう。その触手で君は、人間を捕食した事があるのか?」


 その問いに、マコは慌てた様子で否定した。

 

「いやっ、そんな、人間を食べた事はありません」

「ふむ。君は、人間を捕食はしていないんだね? じゃあ今まで何を食べていた?」

「洞窟の虫や小動物です。ネズミとか、蝙蝠とか・・・・・・」


 触手で食べると味や食感は無いので、とにかく動くものなら何でも食べた。

 そうやってあの環境で生き延びたのだ。

 まともな食料と呼べる物は皆魔族が消費してしまい、彼女はそれこそ泥水を啜って生き延びたのである。

 この触手が内燃機関を有し、毒性のある物であろうと全てエネルギーに変換してくれた。


「じゃあやろうと思えば人間もいけるんだな?」

「い、嫌ですそんなの! そんな事出来ません!」

「・・・・・・確かに君は戦いの時、躊躇していたな。よし、実際にどんなものか、よく見せてくれ」


 エリクは触手を手に取った。


「どこが捕食孔なんだ?」

「あ、えと、そ、その前に・・・・・・」


 マコはもじもじしながら言う。


「あの、大勢に見られるのは、恥ずかしい・・・・・・です」


 エリクは何だそんな事かと意外に思った。


「そうか。なるほど、分からないでもない。君を尊重して最大限配慮しよう。近衛兵長!」

「ハッ!」

「近衛兵の皆を外で待機させてくれ」


 人払いくらいしてもいいだろう、とエリクは考えた。

 今から魔物とはいえ、仮にも女の子の下半身を触るのだ。

 あまり傍目にも宜しくないという意識が、多少なりとも彼にもあったので快く願いに応じた。

 こうして、エリクだけがマコと一緒に部屋に残った。



□■□■□■□■□■□■□■□■



 近衛兵長は部下達と一緒に、外の階段に待機していた。

 軽装鎧とはいえそれなりの重量があるので、皆が階段に腰を下ろして休んでいた。

 しばらくすると、誰かが下から階段を上って来る音がする。

 マデリンであった。

 錬金術で作られた珍しい魔物の女の子を自分もよく見たい、とやって来たのだ。

 近衛兵達が一斉に立ち上がって敬礼する中、近衛兵長が挨拶した。


「これはマデリン様。このような所へ」

「皆さんご苦労様。中、入ってもいい?」

「いえっ、その、対象は内向的な性格でして。エリク様が一対一の尋問中です。刺激を与えない方が」


 近衛兵長は暗に、入室はお控えくださいという雰囲気を出した。


「ふ~ん。どうしよっかな~。ちょっと覗いてみる?」


 するとマデリンは悪戯いたずらっぽく笑いながら、水晶玉を肩掛け鞄から取り出した。

 魔導士なら皆が知る、遠見の水晶球を使おうというのである。


「え、あっ、それは・・・・・・」


 確かに覗くなとは言われていない。完全にバレないならばと、近衛兵長も一緒になって水晶球を覗き込んだ。

 しばらく二人が様子を窺っていると、声を漏らし始めた。


「ふぅ~ん。・・・・・・えっ?! ・・・・・・ほぉ~!」

「ああ、こ、これは!」


 二人が興奮し始めたので部下達が色めき立って見たがったが、近衛兵長が下がらせる。


「シッ! こ、これは、お前達は見てはならん!」


 なにやらゴシップの臭いがした。


「・・・・・・神の使徒ともあろう者が。イケナイ遊びを覚えたようねエリク」

「えっ、エリク様! 何という事を!」


 余程何かあったかと、部下がどよめく。


「入るわね」


 意を決するようにマデリンが言い放つと、近衛兵長は答えた。


「は、はいッ! どうぞ!」


 近衛兵長が道を開ける。

 マデリンは扉を勢いよく開いて、室内に入って行った。

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