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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
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第066話 「狩る者から狩られる者へ」

(ケイオス視点)

 私は守り貝の結界を解いて移動した。吸血鬼は魔力により飛行出来る。足を使うより遥かに速い。

 近づいて行くとキマイラはビクッ! と身震いしてこちらを振り向いた。

 私の魔力が強過ぎるせいだな。感覚の鋭い動物系の魔物は気づくのだろう。

 ロジャー君は・・・・・・間に合った。無事なようだ。


「フハハハ!」


 気分が高揚して笑ってしまう。

 生憎と相手は人間ではなく魔獣だが、久しぶりに力を開放して獲物を八つ裂きに出来ると思うと堪え切れない。

 キマイラは私を脅威として警戒している。もう獲物どころじゃないようだな。

 明らかに格上の存在が、殺意を放ち接近しているのだから当然だ。

 しかしながら滑稽だな。身構えたところで無駄だというのに。

 ある程度距離を詰めた私は、キマイラ目掛けて右腕を振るった。

 影爪えいそう。右腕から巨大な影の腕が伸び、鉤爪かぎづめがキマイラの脇腹を抉った。


「グルルォッ!」


 突然の痛みに、魔獣が苦悶の唸りを上げる。

 闇の魔力を自在に扱える吸血鬼は、無詠唱で闇の魔法を手足の如く扱う事が可能だ。

 今使った影爪は、抉った物を虚無へと削り飛ばす攻撃。

 物理的な防御は意味が無い。リーチもそこそこあり、魔獣如きがどう身構えようと一方的に斬り刻める。


「メエエッ!」


 するとキマイラの山羊の頭が何か呪詛じゅそを放った。私の脇腹に傷が走り出血する。


「ほう。魔獣の分際で、小賢しい真似をするじゃないか」


 これは・・・・・・受けた傷を相手にも与える呪いだな。

 影爪で抉られたのと同じダメージ。我ながら結構な深手だ。

 山羊の頭がニィッと口元に笑みを浮かべた。不気味な表情。いい顔だ。そうしていると悪魔のようだぞ。

 私は血液を操作して出血を止めた。血液の操作は吸血鬼の得意技だ。

 このまま身体を影化して傷を治してしまっても良いが、やり返してやらねばな。


「では下等な獣に、本物の闇の魔法を教えてやろう。こうやるのだ」


 私は闇の魔法の中でも、特に得意とする生命吸収ドレインライフを使った。

 大量の闇が魔獣の身体から漏れ出して、私に吸収される。

 実体から本質そのものを抜き取る凶悪な魔法である。生命体からこのように影を抜くと、大抵は衰弱して絶命する。

 反対に私の傷は魔獣から奪った影が塞いでいく。傷が瞬く間に治った。


「クゥオオオン!」


 キマイラが悶え苦しんで転げ回る。

 恐らく今まで感じた事が無い苦痛を味わっているだろう。

 生命がごっそりと抜き取られ、本能で死を感じるような痛みと寒気、そして恐怖。ありとあらゆる負の感覚に見舞われているはずである。


「どうかね本物の闇の魔法は? 呪詛などとは比べ物にならないだろう?」


 獣とはいえ魔獣である。恐らく人語を解していよう。

 私は問いながら地上に降り、歩いてキマイラに近寄った。

 すると苦し紛れか、魔獣の尻尾である蛇の頭が素早く噛みついてきた。


「フン。毒牙かね」


 巨大な蛇の頭が、私の右肩から腹部に掛けてを飲み込むように噛んだ。巨大な牙が深々と突き刺さり、焼ける様な痛みを感じる毒が注入される。

 私は全身を影に変化させ、ズルリと蛇の口からずれるように抜けだした。


「まあ血液を操作出来る吸血鬼に、毒が回る事は無いがね」


 影から実体に戻る際、牙の通った部分は闇が補填して自動で修復される。

 私が手を振ると、毒液だけが身体の外にはじき出されていった。


「ガオオオ!」


 蛇が僅かな時間を稼ぐ間に、キマイラは体勢を立て直したようだ。

 獅子の口から炎を吐き出した。

 これがコイツの奥の手だろう。ここで一番の攻撃を出さねばやられる、とばかりに全力で吹き付けてくる。

 

「そう。私に炎は有効だ・・・・・・当てられたら、の話だがな」


 私は闇の魔法以外に冷気魔法も得意である。腕を伸ばして強烈な冷気を投射した。

 ただそれだけだったが、キマイラの炎は全てかき消される。

 逆に獅子の頭は顔面が凍り付き、たてがみがガチガチに凍ってしまった。力の差は歴然だ。


「クゥオオーン!」


 今までで一番情けない声を上げ、キマイラは後ずさった。

 ここまで私に対して全ての攻撃が、まるで歯が立たなくて絶望したのだろう。


「さて手詰まりかね、魔獣君。では、遊びは終わりだ」


 こうなるともう図体が大きいだけの獣だ。

 こんなヤツは初めから秒殺する事だって出来た。

 だけど簡単に殺してしまっては、勿体無いじゃないか。久しぶりの獲物だからな。

 出来る限り甚振って恐怖に塗れさせ、絶望させた後に無残な死を与えねば。

 何しろこの私に傷をつけたのだ。もう跡形も無く治ってはいるが、私に楯突く行為は万死に値する。

 私が邪悪な笑みを浮かべながらにじり寄ると、堪らずキマイラは後方へと飛び退すさった。


「ン? おいおい全く。興醒めだぞ。まさか逃げるとは」


 私が嘆息する間にもキマイラは蝙蝠の羽を広げ、跳躍からの滑空で遠ざかろうとする。


「ここから肉を裂き血を吸う楽しい時間なのだ。逃がす訳が無かろう」


 私も飛行して魔獣の後を追う。私の方が飛ぶのは速い。

 お前は、ここで死ぬのだ。



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