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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
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第063話 「すれ違う二人」

「ったくよぉー。お前、本気でやったら大戦争になっちまうだろうが。やめろやめろ!」


 師匠は翌日の朝になって現れた。

 ロジャーが事の経緯を説明すると、クーガーへと詰め寄った。


「ガハハハ! アイザックが言うならやめておくわい。儂もいたずらに人死にを出したくはないでな」


 この王の性格からすると、敵兵の事を言っているのだろう。余程の自信である。師匠が止めねばどれ程の被害が出た事か。危ないところであった。


「ウェスティア侵攻は一旦取り止める。進軍を待とう。だが、調査結果は早めに頼むぞ。数日中にな」


 彼の愛娘シクラメアが捕らわれて、既に三か月以上が経過している。生存の確率は、時をおく毎に絶望的になっていくのだ。

 親の心境からすれば、居ても立っても居られない。クーガーはしっかりと釘を刺した。


「おう。ここら一帯ほぼ探索は終わってるからな。残すとこは後二か所くらいだ。もうそんなに時間は掛からないぜ」


 師匠の心眼による索敵の範囲は、視界全てに等しい。あらゆる生物の気配を探知出来る。地表はおろか、地中ですら少しなら通す程だ。

 大型の魔獣が居れば、見落とす事はありえなかった。

 これまで上空からほぼ全域を捜索し、地上に降りて隠れられそうな所は虱潰しに当たってきたという。

 これでも心眼が届かないところというと、後はもう深い洞窟の中くらいである。

 師匠は最北の岩山を捜索すると言った。


「あそこはちょっとした天外魔境みてーな所だからな。隠れるには打って付けの洞窟がいくつもある」


 そこが怪しいと睨んでいたのだ。もう考えられるのはそこくらいしか無い。


「お前等は西の大草原を見てきてもらいたい。あそこは木々が無いんでな。遠くから見ただけなんだ」


 師匠が言うには平地に大型の魔獣が隠れられるとは思えず、しっかりとした探索は後回しにしていた場所なのだという。

 無論、心眼による索敵で平地の獲物を見落とす事など考え難い。魔獣が潜んでいる可能性は限り無く低いのだが、あくまでも念の為であった。


「あそこで魔獣と遭遇する事は無いとは思うが、万が一でも無理はするな。四日以内にここへ戻れ。俺もそれまでには戻って来る」


 行きに二日、帰りに二日の行程である。距離を考えると、それが徒歩で掛かる日数だろうと師匠は考えた。


「草原の先は海になっている。お前等、海を見た事が無いだろ? 物見遊山に来た訳じゃないが、まぁ一度目にしておくのも悪かぁない。そこまで行ってきな」


 海ですか! とロジャーは嬉しそうにした。アーロンとケイオスもまんざらではない様子であった。三人共、生まれてこの方まだ海を見た事が無かったのだ。


「よし、そうと決まればさっさと取り掛かるぞ。まずは飯にしよう」


 師匠は探索から帰ったばかりにも係わらず、全く休もうとしない。まるで疲れを知らないかのようである。

 これから朝食を済ませ次第支度をして、ここを発つ事になった。

 食事は昨晩の残り物を漁るような感じで、腹を満たす分はあったのでそれらを頂く。

 食事中にケイオスが叫んだ。


「ロジャー君! 私の使い魔に、勝手に餌をやらないでくれたまえ!」


 白い毛玉がスイカ大に肥大化していた。


「ぴーちゃん美味しそうに食べるからさぁ、ついあげちゃうんだよねぇ」


 そう言いながら餌をやるロジャーに、全く悪びれた様子は無い。ぴーちゃんは際限なく食べ続けている。


「このッ! 太り過ぎだぞ! もう食べるんじゃない!」


 ケイオスは毛玉をつかんで料理から引き剥がした。


「ぴぃーっ!」

「まったく、こんなに膨らませて。重ッ!・・・・・・お前、飛べるんだろうな?!」


 そう問いかけると、応えるかのようにぴーちゃんはフワリと宙に浮いてみせた。


「ぴぃっ!」

「・・・・・・逆に、何故浮かんでいられるのかが不思議になってきたぞ」


 元気に鳴くぴーちゃんは、すっかり太って丸々と膨らんでいる。

 ケイオスは顔を顰めて太った使い魔を観察するのだった。

 その後、食事が終わり各々出発の準備をし始めた。

 

「ところでロジャー。街で羽を伸ばしてきたんだろうな? どうなんだ、えぇ?」


 師匠がニヤニヤしながらロジャーに話しかけてきた。 


「え? 何の話ですか?」

「何の話ってお前、金をやっただろ? 一発キメてこいって。まさか何もしてこなかったのか?」


 ロジャーは最初忘れていて、師匠が何の話をしているのか分からなかった。しかしそう言われてすぐに思い出した。


「あー! はい! その話ですか。一発どころじゃありませんよ! 何発も覚悟をキメてきました」

「えぇ?! お、おう。そりゃ凄いな・・・・・・で、どうだったんだ?」


 予想外の威勢良い返事に、師匠は面食らった。


「大変でしたよ。悲鳴を上げられるし。やり過ぎて衛兵に追いかけられて」

「なに?! 随分と強引にやったんだな。そこまでやれとは言ってないぞ」


 この弟子は真面目な割に時々、突拍子も無い事をしでかす。師匠は鼻白んだ。


「あれっ?! 僕何か間違えました? 師匠の指示通り、覚悟をキメたんですけど」

「いや、どんな覚悟だよ。俺は犯罪行為に手を染めろとは言って無いぞ」


 一体何をやったのだろうか。師匠は顔をしかめた。


「えっ、僕がやった事って犯罪なんですか?」

「婦女暴行は犯罪に決まってるだろ。何言ってんだお前」

「はい? ふじょぼうこうって何ですか?」

「いや、そりゃあ・・・・・・何だかどうもすれ違ってる感じがするんだが?」

「そうですね。僕も何かそんな気がします・・・・・・」

「まあいい。一旦保留だ。全部終わったら、もう一回詳しく聞かせろ」


 どうにも話にならないので、師匠はとりあえずこの話を打ち切った。衆目の目もある。

 いつか二人になった時に、もう一度しっかり問い詰めようと考えた。

 師匠は会話を終えると、先に北へと発っていった。

 ロジャー達三人は万全の準備を整えてから、西の大草原へと向かうのだった。




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