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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
46/94

第046話 「野望」

(ケイオス視点)


「うわあああ!」


 突然無能が叫び声を上げた。

 何だ騒々しい。付近の霊を刺激するな。


「どうした。何があった?」

「あ・・・・・・あ、アーロンの背中に」


 なるほど。脳筋の背中に霊体が乗っているな。無能にも見えるのか。

 魔眼のせいか、ある程度マナを発する強力な個体となると視認出来るのだろう。

 脳筋が少し前傾し猫背になっており、そこに真っ黒な影がぴったりと張り付いている。


「何だ? 何かあったのか?」


 当の本人は何ら気づいていないようだ。霊を背中に乗せたまま問いかけてくる。


「あ、アーロン、せな、背中! 背中に!」

「んん? 背中が何だ?」


 鈍いにも程があるな。アホ面め。


「幽霊が乗ってる!」

「はあ? 何も居ないぞ?」


 脳筋には完全に見えないようだ。


「ぴったりくっついてるよ! 真っ黒い影が!」

「えー? そうか? 何も見えないけど……俺を脅かすなよ。ははは!」


 この状況で、誰がそんなつまらん冗談を言うと思ったんだ。


「平気なの?!」

「ああ。ちょっとさっきから肩がダルいなーとは思ってるけどな。姿勢が悪いせいか? ンン~!」


 脳筋が背を勢いよく伸ばすと、真っ黒な影が跳ね飛ばされて消えた。


「おっ! やっぱ姿勢だったわ。猫背は良くないな。ハッハッハッ」


 信じられん事をする男だ。今、霊体を跳ね飛ばしたぞ?

 そんな事は本来不可能だ。

 私が驚愕していると、無能も呆れて口をぽっかりと開けっぱなしにしていた。


「何なのだ今のは。アーロン、どうやって」


 そもそも塩のお守りが効力を発揮していて、霊体が張り付けるはずが無いのだ。

 そう思って脳筋を見た私は絶句する。

 もう既に塩を全部こぼしているではないか。


「これは。お前・・・・・・」


 なるほど。

 あれだけ注意したというのに、ほとんどすぐに呪文を崩したのか。だから霊が背中に憑りついた。

 ところがこの脳筋はアホ過ぎて、何も気づかない内に霊を跳ね飛ばした。

 そこのところなんだが実によく分からない。

 そんな事が本当に可能なのか?


「まあいい。無事で何よりだ」

「ん? ああ無事だ。何かあったのか?」


 こんなバカを心配するのは時間の無駄だと判断した。

 塩のお守りを作り直してやる必要すらあるまい。

 どうせ作ったところで、五秒くらいで駄目にするに決まっている。

 

「いや、何も。それより目的の物を見つけよう」


 私はバカバカしくなって考えるのをやめた。

 少しささくれた精神を集中し、探索を再開する。

 


□■□■□■□■□■□■□■□■



 しばらく探索を続けていた。

 この辺なのだ。この辺から怪しい気配がする。

 件の絵画があるとしたらこの辺りであろう。

 私は掛け布の掛かったそれらしい品を物色していく。


「うわあああ!」


 また無能が悲鳴を上げた。もうウンザリだ。

 何度私の邪魔をしたら気が済むのか。

 私が眉間にシワを寄せて振り返ると、無能が腰を抜かしてへたり込んでいた。


「死神! 死神が!」


 何を言っている。死神だと?

 簡単に言うがそいつは結構レアな奴だぞ。そんじょそこらには居ない。

 何かの見間違いではないのか?

 思考しながら無能の指差す先を見る。脳筋と目が合った。


「何だよまた。何かあったのか?」


 脳筋の背後、空中で黒いローブをはためかせた骸骨が、大きな鎌を構えている。

 そんな一目で死神だと判るヤツが、脳筋の首筋に鎌を掛けていた。


「どうした? もう何だよ? 冗談はやめてくれよ」

「確かに死神だな」


 私は冷めた口調でそう言った。

 だって当の本人に全然危機感が無いんだぞ。


「お前等が脅かすから、なんだか急に肩が凝ってきたよ」


 おかしいな。死神が鎌を一生懸命引っ張っているのが見えるから、肩が凝った程度で済むはずがないんだが。


「だろうな。普通なら死んでるぞ」

「もう冗談はよせって。それ面白く無えよ。笑えないぜケイオス。なんか首が痛くなってきたじゃないか」


 そうか奇遇だな。私も全く笑えない。

 さっきから反動をつけるような態勢で、思いっきり死神が鎌を引いてるからな。

 むしろ何故痛がるだけで済んでいる? 何故死なないのだ?


「冗談ではない。お前このままだと死ぬぞ」

「ええ? 嘘だろ? 本当にその死神とやらが、俺に何かしているのか?! クソッ! 離れろ! この!」


 脳筋は蝿でも追い払うように虚空を殴りつけている。

 死神に殴り掛っても無駄だ。そんな事をやっていると怒りを買って殺されるぞ。


「んん?! 何かおかしい! あっ! 首が痛ぇ!」


 それ見た事か。やっと痛みが来たようだな。脳筋は愚か過ぎて、痛みの回り具合が遅いのか。


「本来ならお前はもう助からん」


 死神というのは高位の霊体で、死の神の使徒となった者だ。神に献上する人間の魂を刈り取る大鎌を与えられている。

 言わば死の天使であり、普通これにやられたら助からない。

 よもやそれに狙われて絶命しない馬鹿が居るとは思いもしなかった。


「だが、私が居て良かったな。お前は助かるぞ」


 私はネクロギアを両手で持ち、表紙に描かれた魔法陣を死神へ向けた。

 

「魔導書ネクロギアよ。ケイオス・アインドルフ・ルノーゼスファウンゼン・フォン・ジュノーシュタット・リヒテンハイドの名の元に命ずる───」


 短い呪文を唱える。

 いささか我が名のせいでどうしても長い詠唱となってしまうが、それは致し方無いだろう。

 そうこうしている内に、脳筋が苦しんで叫んだ。


「痛ェーッ! 早くしろケイオスーッ! 俺は助かるんじゃなかったのかーッ!」


 可能な限り善処する予定だ。ダメだったらすまないな。その時はせめて君の魂も、魔導書ネクロギアに吸収させてもらうよ。

 私は呪文の最後の一言を発した。


「シール・ヒム! の魂を封印せよ!」

 

 グォォオオオォォオオオ──────!


 死神が苦悶の叫びを上げて、魔法陣へと吸いこまれていく。

 その断末魔はおぞましい響きで、無能と脳筋は驚きの表情で固まる。

 ほんの数秒で死神は消え失せた。


「何今の?!」

「おぉ! すげー声がしたな! 首が痛くねぇ! 肩凝りが治ったッ!」


 相変わらず脳筋には見えていないようだが、声は聞こえたのか。

 

「これがネクロギアの力だ」


 魔導書に死神が封印された。

 コイツは強力な手駒を手に入れたぞ。ククク。


「す、すごいよケイオス! こんな魔法が使えるなんて!」


 ロジャー君が目を輝かせて私を見る。

 フッ。称賛するがいい。普段からそうあれ。


「何が何だか分からんけど、すげーぞケイオス! 頼りになるじゃねえか!」


 脳筋に理解など求めていないが。

 いずれ私は魔王となる。その為に師匠を欺き、この禁書を手に入れたのだ。

 死神が手に入ったのは喜ばしい。我が復讐の野望は未だ遥か先だが、こうして着実に力をつけていけば良いだろう。




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