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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
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第040話 「サブクエスト発生」

 師匠は北のスティリア砦から北西方面の調査を、既に終えていると言った。

 流星の如く空を駆け、感知術を駆使して虱潰しに回ったという。魔獣は北西方面に居ない、と師匠は言い切った。


「何にせよ今回の仕事は期限が無くて有るようなもんだ。急がんとな」

「無くて有る・・・・・・?」

「それがなあ。ウェストリコのお偉いさんが喚いてんだよ。遅くなって魔獣の被害が拡大した場合、そのツケは俺達に払わせるんだと」

「何ですかそのツケって。何をされるんです?」

「処刑だ。責任をとらされて首だよ首。北方部族の目につく場所に晒される手筈になっているらしいぜ。被害者の溜飲を少しでも下げるんだと」


 その首が解雇を意味するものではない、と理解してロジャーは青ざめた。


「まぁ俺はやられる気は無いがな。そうなったら領主と戦うまでだ」

「やめて下さいそんな!」

「だからそうならんようにするんだろうが。頼むぞお前等」

 

 結局これだ。師匠の持ってくる話はいつも危険と隣り合わせである。聞いてないですよそんな話、とぼやいたところで無駄なのだ。  

 ともあれ今後は師匠が北を調査するので、ロジャー達には北東方面を行くよう指示がなされた。


「北東にはよ、勢力に変化が無けりゃあウェンドリドって部族の村がある。そこで落ち合うとしよう」


 師匠は地図を指し示してそう言った。

 

「攻撃されそうになったら魔物狩りだと言え。俺達は中立扱いだ」


 魔物を退治してくれる存在は、どの勢力からも頼られている。争いが度々起こる危険地帯ではあるが、魔物狩りである事を伝えれば何とかなるはずだという。


「まあ最悪戦闘になったら腹を決めろ。理屈の通じねえ奴等には力だ」


 結局最後は物騒な話になった。アーロンがそれに応える。


「それなら得意とするところだ。むしろ簡単で助かる」


 師匠がニヤリと笑ってアーロンの方を見やった。


「フン。頼もしいじゃねーか。期待してんぞアーロン。お前等が来てくれたお陰で楽になりそうだ。助かるぜ」


 師匠は機嫌良さそうに言った。



□■□■□■□■□■□■□■□■



 今後の大まかな指示を終え解散の雰囲気になった時、師匠がロジャーを手招きして耳打ちした。


「なあ、ロジャー。それはそうと金は使ったか?」

「えっ?! あっ、はいっ! 使ったっていうか、無くなったっていうか・・・・・・」


 ロジャーは狼狽えた。


「どうだった? 楽しんだか?」


 師匠はニヤニヤして聞いてくるのだが返答に困る。


「い、いえ。実はそれが・・・・・・アーロンと酒場に行きました」

「おう。良いな。まずは景気付けに飲んだか」

「や、僕はお酒が飲めないので、アーロンだけ・・・・・・」

「何だつまらん。それで、その後は?」


 ロジャーは言い辛くてうつむいた。しかし聞かれた以上は答えなければならない。


「・・・・・・気が付いたら巾着が切られていました」


 財布を盗まれた事を話した。


「あぁ~? どういう事だ?」

「今思えば怪しい女でした。酒場で近づいてきて、その」


 色香にたぶらかされたとはどうにも説明し難い。


「なるほど。どうせ色仕掛けにかかったんだろ」

「何で分かるんですか?!」

「マジか! 当たり? 弱いねーお前は!」


 師匠はカマを掛けたようだ。それが当たってしまい笑っていた。


「・・・・・・その後は酒代も払えなくなっちゃって。深夜まで皿洗いをしてました。今は泊っている所の宿代も無くて困ってます」

「はははは! そりゃ酷ぇ。どれ、しょうがねぇな」


 師匠は懐から財布袋を出すと、中から金貨を取り出した。


「ほれ。また十枚くれてやる。持ってけ」

「ええっ! これは! あの・・・・・・良いんですか?」


 ロジャーは心底驚いて困惑した。

 まさか師匠が追加でお金をくれるなどとは、思いもしなかったのだ。


「無駄遣いしろとは言わん。だがお前はもう少し女に慣れろ。これは師匠命令だ。分かるな? 一発キメてこい」

「えっと・・・・・・はい!」


 きつく叱られるかと思っていたのに許されたので、ロジャーは感動して肝に銘じた。


(師匠の言いつけ通り、しっかり女の人に慣れなきゃ。よし、覚悟をキメるぞ!)


 心の中で誓う。


「そうだ、丁度良い。その金をやる代わりに、やってもらいたい仕事がある」


 師匠が懐から依頼書を取り出して、ロジャーに渡した。


「この依頼を片付けてくれねぇか」


 ロジャーは依頼書に素早く黙読で目を通す。


 依頼主:サイモン・アーチドロワ・ゴルドローテ・デ・スティリア・ウェストリコ。

 ウェストリコ公爵家の四男である。彼は美術品を収集する好事家で、とある絵を買ってから怪奇現象に苛まれていると書かれている。

 夜な夜な悪夢にうなされ、使用人達が廊下で足音を聞いたという。中には幽霊を見たと言い出す者も居た。

 その内おかしくなってしまう者も出始め、次々と使用人達に暇を出した。今は人がほとんど居なくなってしまい、この貴族も病床に伏せているらしかった。

 依頼はこの現象の解決を望んだ内容となっている。


「俺がここに泊まっているって、どうやって調べたんだか。まあ面倒な野郎だよ。忙しい時にどうしようかと思っていたんだ。お前等に頼むぜ」


 今は魔獣の探索調査でそれどころではないのだが、ウェストリコで数日待つ間に使者がやってきて、師匠の元に依頼書を置いていったのだそうだ。


「俺はもうコイツの相手はしたくないんだ。やたら細けぇーんだよ。俺は押し問答をしていると気分が悪くなってくるんだ」


 師匠は依頼主と古くから関係があり、そして性格が合わないのだという。

 ウェストリコ公爵家はここスティリア地方を治める大貴族であり、今後の事を考えると断り辛い。

 ロジャー達にやらせるのは妙案だと師匠は考えたようだ。

 するとそれまで黙っていたケイオスがロジャーに言う。


「すまない、ロジャー君。私は今日は駄目だ。済ませたい用事がある」

「え、じゃあ・・・・・・仕方無いな。今日は僕達だけで当たってみるよ」


 師匠が、んん? と口を挟んだ。


「それは困るぞケイオス。その依頼は、魔法使いのお前が適任なんだ。お前が今日都合が悪いというなら、明日お前が行けるようになってから一緒に行ってやってくれ」

「アイザック師、今の私では付いて行っても足手まといになりそうだが?」


 ケイオスが反論すると、師匠は眉間に皺を寄せて言い返す。


「ロジャーには、まだ霊体を攻撃する技を教えてねーんだよ。魔法攻撃できるヤツが居ないと駄目だ。その依頼は急ぎだが、明日取り掛かってくれればそれで良い


 ロジャーは思った。師匠はまだケイオスが役立たずである事を知らないのだ。強力な魔法使いだと思っているのだろう。


「師匠。あの、実はケイオスは薬を使っておりまして。今は何の力も出せないんですよ」

「何? どういう意味だ?」


 ロジャーが師匠に説明しようとすると、ケイオスがそれを手で制した。


「待ちたまえ。今、霊体と仰せられたか? 詳しく内容を聞かせてくれ。私の魔術でどうにか出来そうだ」


 急に自信溢れる口調になったケイオスに、ロジャーは少々驚いた。


「でもケイオス、さっき足手まといになりそうって」


 依頼書を手に取って暫し黙読したケイオスは顔を上げて言う。 


「これなら私の得意分野だ。任せて頂こう」


 不敵な笑みを浮かべている。

 ロジャーとアーロンは怪訝そうに顔を見合わせた。




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