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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
39/94

第039話 「師匠との再会」

 憂鬱な朝だった。

 ロジャーはあまり眠れない夜を過ごし、早朝からアーロンとケイオスの部屋を訪れていた。駄目元でケイオスに金の普請ぶしんをしてみる。

 ところがというかやはり、ケイオスは金銭を一切持っていなかった。


「生憎だが所持していない。この旅に参加する時点で、薬の材料を買うのに手持ちは全部使ってしまったからな」

「これからどうしよう・・・・・・もうここの宿代も払えないよ。何とかしてお金を用意しないと・・・・・・」


 ロジャーが嘆く。しかしこの場の誰にも解決策などありはしない。


「何だ、こんな時間に三人で集まって。何をしとるんだね?」


 沈黙を破って現れたのはコネリーだった。たまたま彼の部屋はすぐ目の前で、早朝から声がするので気になって出てきたのだ。

 ロジャーはこの際、商人であるコネリーなら頼めるかも知れないと考えて話をしてみた。事の次第を話し、なんとかお金を貸してもらえないかと相談する。


「ありゃ~。タイミング悪いな。昨日商品の仕入れに使っちまったばかりだわい。自分の宿代しか残ってないぞ」


 運が悪かった。すっかり手詰まりとなり、ロジャーは頭を抱える。


「夜遊びした上、財布を盗難に合った大失態は君達に責任があるんだからな!」


 ケイオスが文句を言う。

 彼は空き時間に錬金術の研究を続けており、他に時間を割きたくなかったのだ。

 君達二人でどうにかするべきだ、などとブツブツ言い続けている。


 ロジャーは考えた。

 今日は師匠と会う日だ。正直に相談したらどうなるか。 

 師匠はウェストリコにどれくらい前に着いたのだろうか。まず出会うなり遅いと叱責を受けそうだ。陰鬱な気分になる。

 こんな状況でお金まで無くしましたとは報告したくない。何に使っても良いとは言われていたが、全部無くしましたとは。

 だが、黙っていてもいずれ事態は露呈するだろう。

 金額が金額だけにうやむやには出来まい。

 後になって事が明るみに出た場合、非常に宜しくない。この件の報告をしない分罪状が増え、量刑が重くなりそうである。

 そもそもそんな本で読んだ裁判みたいに、公正な判断の師匠ではない。感情次第ではメッチャクチャにされる。もみくちゃのボッコボコにされるだろう。

 それでも正直に相談するか? ロジャーは呻いた。


「ダメだ・・・・・・言っても言わなくても殺される」


 いっそ逃げてしまいたかった。一瞬、本気で考える。

 いや、仙術流派の感知術、追跡術から逃れる事は難しいだろう。まだロジャーが知らない技も沢山ある。

 逃走して捕まった場合は、考えたくも無い。


「仕方が無い。師匠に報告して助けを乞おう」


 どっちみち、もはや処刑台に立たされているようなものだ。正直でいれば地獄の裁判官にも慈悲はあるかも知れない。

 ロジャーは一縷いちるの望みに賭けてみる事にした。



□■□■□■□■□■□■□■□■



 冬の朝は日の出が遅い。明るくなるのを待ってから、ロジャーとアーロンは不満を言い続けるケイオスを連れて外へ出た。

 冷え込みがきつく人通りの少ない通りを抜け、街の入り口付近にある大きな宿屋へと向かう。ここに師匠が居るはずだ。


「頼むよ二人共。師匠は暴力が服を着て歩いているような人だから、お行儀良くしていてね」


 ロジャーは二人に、機嫌を損ねたら身の安全は保障しかねるからね、としつこいくらいに言い聞かせた。特にケイオスは危ないと判断しての事だ。


「失敬だな君は。目上の人物への礼儀くらいは心得ているよ」


 一番心配なのに限ってまともそうな事を言う。ロジャーは顔をしかめる。

 不安だが腹を決めるしかない。宿屋のドアを開けて中に入った。

 カウンターの店主に待ち合わせだと告げ、台帳で師匠の泊っている部屋を教えてもらってそこへ向かう。

 師匠の部屋をノックすると、しばらくしてドアが開いた。 

 

「遅かったじゃねえか! 待ちくたびれたぜ! ・・・・・・まあ、入れよ!」


 ロジャーはその声だけで肩がビクッとした。

 久しぶりに再会した師匠は変わりなく元気そうだ。


「長旅だからな。徒歩じゃ多少の遅れも仕方がねえ。良しとしよう」


 部屋に入ると適当な所に座れと師匠に指示されて、三人はベッドを椅子替わりにそこへ座った。師匠は椅子と机を引きずって持って来て、三人の前に座る。 


「あー、座ったままで良いぜ。俺は仙術流派の魔物狩り、アイザックだ。えぇと、そっちの二人の名を聞こうか」

「鬼神一刀流アーロン」

「フム。で、そっちは?」

闇流派ダークネススタイルケイオス・アインドルフ・ルノーゼスファウンゼン・フォン・ジュノーシュタット・リヒテンハイドだ」

「あー? 何だ?」

「ケイオス・アインドルフ・ルノーゼスファウンゼン・・・・・・」

「はあ?」

「・・・・・・ケイオス。ケイオスだ。宜しく」

「おう、宜しくなケイオス」


 ロジャーはそのやりとりをハラハラしながら見守っていた。



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