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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
37/94

第037話 「浮かれ過ぎている」

 二人は酒場のカウンター席に座っている。

 まずは酒場で一杯やって温まり、そこで娼館しょうかんが何処に在るか聞こうというのだ。

 酒を飲む習慣の無いロジャーにしてみれば酒場に行くのは気が進まなかったが、情報収集は酒場で行うのが早いとアーロンが言うのでついて行った。


「おっ、酒が来たぞ。まずは乾杯だ」


 給仕娘が飲み物を持ってきた。アーロンはエール酒だったが、ロジャーはただの水で形だけ乾杯につき合う。


「アーロン、聞かなくて良いの?」

「バカお前、この娘に聞けってのか? 変な顔されるぞ。ほれ、乾杯だ、乾杯」


 それはもっともである。ロジャーは顔を赤くした。


「浮かれ過ぎだぞお前。周りも見えてねえ」

「うっ、浮かれてないよ!」


 完全に浮かれていた。今夜どんな大冒険が待っているのかと思うと、期待が膨らみ過ぎて、酒も飲んでないのに酔ったようになっている。

 ロジャーは水を飲んで気を紛らわそうとしたが、気管に入ってむせた。


「ゴホッ! ゴホッ!」

「あーもう。この童貞野郎。ちょっとは落ち着け」


 辺り一面ビシャビシャである。

 アーロンが懐から布切れを出して渡した。ロジャーはそれでカウンターを拭く。

 この布は彼が剣を拭く為に持ち歩いている物だ。拭き終えてロジャーは礼を言いながらそれを返した。


「ゴメンありがとう」

「要らねえよそんなの。使い捨てだ」


 布切れは雑貨屋に行けばいくらでも手に入る。わざわざ使用後の物を取っておく必要は無い。

 コイツ完全に舞い上がってるな、とアーロンは少し呆れていた。


「ゴメンね。あー、ダメだ。ちょっとおかしいよ僕。楽しみ過ぎる。・・・・・・娼館ってどんなんかな?」

「どんな所かって、俺もまだ行ったこたあねえからな。人に聞いた知識だけだ。まあでも、やる事は一緒だろ」


 アーロンも街に出たのはこれが初めてだ。性の経験はある彼とて、実はまだ見ぬ魅惑の世界を期待している。

 二人は胸中に思い描く夢を語り合った。

 ロジャーの願望は割と普通であった。初心者であるから当然である。だがアーロンは折角ならいつもやらない事をしたいと熱く語った。


「ええっ、それ汚くないの?」

「知らないのか。すげえ良いらしいぜ。最初に沐浴するって聞いた事があるから、そこで洗っとけば問題ないだろ。お前もやってもらえばどうだ?」

「出来ない。僕には出来ないよそんな!」

「じゃあ普通で良いだろ。俺はやってもらうけどな」


 そこへ給仕娘が料理を運んできた。


「えー! 僕も舐めてもらいたい! やってもらいたいよ!」

「あっ、おいちょっと黙れ!」


 アーロンがロジャーの口を手で塞いだが遅かった。

 給仕娘は眉をひそめながら料理を置き、足早に去って行った。


「チッ! 聞かれたぞ今のは。完全に変に思われただろうが!」


 タイミングが悪い。


「お前なあ、頼むぜマジで」

「ゴ、ゴメン」


 給仕娘にはアーロンの予想よりも悪い勘違いをされたのだが、本人はそれに気づかなかった。




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