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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
34/94

第034話 「素晴しい仲間」


「う・・・・・・ここは・・・・・・ここはどこだ・・・・・・」

「ここはウェストリコに向かう荷馬車の中だよ」


 アーロンが目を覚ましたので、ロジャーはそう答えた。


「うぐッ! げぇっ! がはっ! 何だこりゃあ! 何を飲ませたッ?!」


 アーロンは車内で吐き出した。相当に薬が効いたらしい。

 鬼の類は毒に強い耐性を持つと学んだ事があるが、ケイオス特製のフィーバーポーションはその上をいく効力があるのだろう。

 

「ぐあああ! 酒だ! 酒を持って来い!」


 水ならまだ分かるが、この期に及んで酒を欲するのだからよっぽどである。


「まだそんな事を言っているの? ここには無いよ、そんな物」


 ロジャーは冷たく言い放った。


「アーロン。もう厳しい任務に戻る時が来たんだ。思い出して」


 僕らは飢餓状態で山を歩き回っただろう、とあの時を思い出させる。


「もうシェナビアは遠く離れたんだよ。現実に戻るんだ」


 シェナビアの街を出発してから既に丸一日が経過していた。

 

「ンンーッ! ンーッ!」


 アーロンと一緒に縄で縛ってあったケイオスが騒ぎ出した。


「縄を解いて欲しい? 二度と任務を忘れないと約束したら解いてあげるよ」

「分かった! 分かったから! 頼む! 胃が焼けるように熱い! 水をくれ!」

「ンーッ! ンンーッ!」

「・・・・・・駄目だね。もっと反省するんだ」


 ロジャーはすぐに縄を解かなかった。

 縄はコネリーが持っていた特製のアラクネ縄で、アーロンの力を持ってしても引き千切る事は不可能であった。



□■□■□■□■□■□■□■□■



 昼の間は荷馬車が進むに任せ、夜が来て野営する時になってやっと二人は解放された。

 普段は大人しい奴を怒らせると怖い。身に染みた二人は態度を改めた。


「はぁ、はぁ、まだ胃がおかしい」


 大分時間が経ってもアーロンはまだ辛そうにしている。

 ロジャーはそれを見て、流石にちょっとやり過ぎたかな、と少し心配になった。

 するとコネリーがアーロンに薬を渡す。


「辛そうだなァ。この薬を飲んでみな。楽になるよォ~」

 

 コネリーは錬金術の熟練者で、こういった薬を作るのは得意技だという。

 アーロンは助かったとばかりにそれを飲んだ。

 しばらくするとすっかり調子が良くなったようだった。


「おお! 本当に楽になったぜ! 恩に着るぞ爺さん」


 それを見てケイオスが驚嘆する。


「やるじゃないかご老人。あのフィーバーポーションの反動を抑え込むとは、大した腕だ。素晴らしい。是非その薬のレシピを知りたいものだ」 

「へへっ。ワシの錬金術は死んだ奴でも蘇らせた事があるんだぜぇ。ちょっとした腹痛ぐれえ一発で治せるさ、ヒェヒェヒェ!」


 嘘か真か判らない事を言いながら笑う。コネリーは持ち上げられて得意気だ。

 この二人は今後良い研究仲間になれそうである。

 ロジャーもコネリーを頼もしく思った。もしかしたら良い人と仲間になれたのかも知れない。

 その後、皆で夕食を取った。

 ロジャーが夕食の後、コネリーに訊ねる。


「後どのくらい行くとウェストリコに着きますかね?」

「そうさなァ。もう二、三日ってとこだァ。明日はもうちょっとブッ飛ばしていくかァ!」


 確かに道は平坦であるし荷馬車で移動出来るので、これまでとは格段に楽な旅路だ。これならもうすぐだとロジャーは安心した。

 ところで先程から気になっているのだが、コネリーはどうも何だか様子が変だ。 

 元々、こんな明るさの突き抜けたような人だっただろうか? まるで酒に酔ったような話し方だ。


「コネリーさん、酔ってます?」

「あァ? いんやァ? 酔っちゃあいねぇよ?」


 完全に返答が酔っ払いのそれである。

 おかしい。今回は用心して水は大量に持って来たが、逆に酒は一切積み込まないよう注意を払ったのだ。

 アーロンがあまりにも酒浸りだったので、酒の気を断つ事を第一に強く決めたはずだった。

 だが思い返してみると、コネリーは夕食前からずっと酔っ払ったような感じだった気がする。

 

「あのー、コネリーさん。何か隠している事ってありません?」

「あー、これ使ってるからかなァ? 自作のハッピーポーションだァ」


 ロジャーが訝しんでいるとコネリーは小さな薬瓶を取り出した。


「何ですこれは?!」

「コイツを飲めば百歳のジジイだってギンギンだァ! ヒャヒャヒャ!」


 コネリーは完全にキマッており、妙なダンスを踊り始めた。


「酒より悪いわ!!」


 ロジャーは薬を取り上げて捨てた。


「ああっ! ワシの傑作を! 何すんじゃあ!」


 もしかしたらこのパーティにはろくな人間が居ないのかも知れない。少年は暗鬱たる気持ちになった。




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