第032話 「ガデスとの決着」
「ウォオオオッ! 覚悟しやがれィッ!!」
ガデスは戦斧を袈裟懸けに斬り下ろしてきた。
だがアーロンは避けようとせず、真っ向からそこへ振りかぶった大剣を打ち下ろす。
(馬鹿め! 避けないとは!)
避けも受け太刀もしないその動作を見た刹那、ガデスは勝ったと思った。
特大の刃先を持つ戦斧の一撃で、今までに斬れなかった物は無いのだ。
対人戦では鎧も兜も真っ二つに粉砕してきたし、木造家屋を一軒潰した事すらある。
風が唸る。
頑丈な斧の性能を、強い膂力で存分に生かした渾身の一撃だ。攻撃が必中の軌道を通る。
「ハァァァッ!!」
対するアーロンはただ鋭く、思い切り打ち下ろす!
何の小細工も無い。
回避も防御も捨て、鬼の力を完全に一発の攻撃に乗せた怪力無双の剛剣だ。
その剣速は後から振ったにもかかわらず、ガデスの戦斧の速度を上回った。
高速の世界で大剣の刃先が、ガデスの鉄兜を斬り裂き粉砕していく。
完全に刃が通っている。
頭部を縦に割って尚も勢いは衰えず、一瞬の内に刃はガデスの全身を通り抜け地面に突き刺さるようにして止まった。
ドォン! と重厚な音。
ガデスは袈裟懸けに振り下ろしていた動作中だったが、全てが縦に分断された。
戦斧の刃先がアーロンの背後に飛び、地面にドカッと刺さった。
「フゥゥゥ・・・・・・!」
アーロンが真っ白な息を吐き出して呼吸を整える。身体から静かに白い湯気が立ち昇っていた。
決着は一瞬であった。
ガデスは頭はおろか、全身を真っ二つに切り裂かれて死んだ。まさに一刀両断である。
アーロンが本気の斬撃を出せば、鉄兜や鎧などは用を成さない。
このような離れ業を普通の剣でやれば壊れてしまうだろう。だからアーロンは切れ味より頑丈さを重視した、鉄板の如き大剣を使っているのだ。
ワァアアア!
歓声が上がった。騒ぎを見守っていた野次馬達が、興奮の坩堝と化した。
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この夜、シェナビアの街からガデス一家が消滅した。
住民の手で全ての残党が気絶している内に捕縛された。皮肉にもガデス一家が管理していた牢獄に、当人達が投獄される事になった。
住人は皆ガデスを恐れて苦しい生活を強いられていた為、ガデスを倒したアーロンは英雄扱いである。
無用な殺生を避けた事も大きい。
ガデスは絶命させたが、他の兵は全て峰打ちで気絶させてあった。
中には一般の住人と血縁関係者も多い。彼等を無暗に殺さなかったので、大変喜ばれた。
「あの御方は活人の剣士じゃ」
「悪党を倒す本物の勇者だ」
観衆が口々にもてはやす。
真夜中だが人々の熱狂は冷めやらず、アーロンが酒場に戻ると朝になるまで喧騒が続いた。




