第023話 「鬼神一刀流アーロン」
「一本ッ! 勝負あり!!」
村長シゲンが大声で決着を告げた。
アーロンは既に二の太刀を振りかぶって首をはねる寸前の動作をしていたが、その声にピタリと動きを止めた。
「鬼神一刀流アーロン! 見事な闘いであった!」
称賛されたアーロンは無言で一礼する。
すると周囲の者達がワッと囃し立てた。見事だ、最強だとえらく盛り上がっている。
ロジャーは震えながら大部屋の中央を見た。まだジェイドがそこに倒れたままだ。
「あ、あの! あの人早く手当しないと!」
指差しながらシゲンにそう言った時、ジェイドが起き上がった。
「やるじゃねえかアーロン。腕を上げたな」
ジェイドは事も無げな様子で立ち上がり、ロジャーの前まで来て落ちている腕を拾う。
ロジャーは思わず仰け反った。
ジェイドは腕を元あったようにくっつけると、傷口の血が泡立ち白煙が立ち上った。
数秒後、腕は元通りに繋がった。動作を確認するように指を動かしたり、手首を振ったりしている。
「ふむ。これが鬼か」
ケイオスは関心した様子でそれを見ていた。ロジャーは血の気が引いた。
「再戦の意気はあるか?」
シゲンが厳かな声で訊ねる。
「やらせてくれ村長。今度は俺が勝つ」
「良かろう。アーロン! 再戦じゃ!」
再びアーロンがやってきて、ジェイドとの闘いが始まる。
ロジャーは目の前で行われる異様な光景に呆れていた。
ガン! ガンガン! ガキィーン! ズシャシャッ!
今度はジェイドの双剣がアーロンの胸に深々と突き刺さった。
ぐふっとアーロンが喀血する。
「技あり!」
かと思えばアーロンはそれをものともせず大剣を振るった。
スパァーン!!
ジェイドの首が切断されて宙を舞う。
首は勢いよく回転して鮮血を撒き散らしながら、運悪くまたロジャーの前にドカッと落ちてきた。
「ひいぃぃっ!」
あまりにも息を呑んだ為か、喉笛を空気が逆流して音を立てた。自分が悲鳴を上げているのを数秒後に遅れて理解する。
ロジャーは飛んできた物を直視する事が出来ずに、顔を背けた。
「一本ッ! 勝負あり!!」
シゲンが高らかに宣言する。
「肉を切らせて骨を断つ。流石は鬼神一刀流、見事であった!」
「いやいやいやいや! おかしいでしょ?! しっ、死んでますよこれは!」
一本とかではない。
そんな事を言っている場合ではないんだと、ロジャーがシゲンの着物の裾をつかんで抗議する。
だがそうこうしている内に、ロジャーの目の前に誰かが手を伸ばした。
気配に振り返るとジェイドの身体だけが、流血しながら這いずってきていた。
「ぎゃああああ!!」
ロジャーは飛び退った。
ジェイドの身体はしばらく辺りを手探りしていたが、己の首に手が当たるとつかみ上げてくっつけた。
先程と同じ様にジューッと泡だって白煙が上がる。
数秒の後に首は元通りつながって、ジェイドはゴキゴキと首を鳴らしてからふぅと息をつく。
「チッ! 筋肉でしめつけたな! 俺の力でも双剣が抜けなかったぞ。馬鹿力め!」
見ればアーロンも胸に剣が二本共刺さったままだ。
彼は自らの両手でそれをつかみ、一気に引き抜いた。
「ガハッ! ゴホゴホッ!!」
片膝をついて大量の血を吐き出す。
「ゴホッ! いっ、痛ぇ~・・・・・・ゴホッ!」
胸から白煙が上がる。そして口からも白い煙が血と一緒に吐き出された。
「ガハハッ! ゴホッ! してやったりよ! ゴホッ! ガハハハッ!」
アーロンは苦しそうに咳込みながらも、笑っていた。




