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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
19/94

第019話 「錬金術のポーション」

 次の日の朝。

 ケイオスが二日遅れて到着したのでロジャーは気が急いていた。

 あまり遅れると師匠にどんなお叱りを受けるか分からない。

 日の出すぐの早朝からケイオスを叩き起こし、身支度を整えるとすぐに庵を出発した。

 鬼哭き村は東に山をいくつも越えた所にあるという。途中何度か野宿もせねばならないだろう。


「ロジャー君! ちょっと! ちょっと待ちたまえ!」

「また休憩ですか? まだ一刻も歩いていませんよ」


 ケイオスはよく庵まで来れたな、と思う程に体力が無く、すぐにへばって座り込むのでロジャーは辟易した。


「当たり前だろう。今の私は人間だ。山道では息も上がる」


 奇遇ですね僕も人間ですよ、とロジャーは言いたくなった。

 

「ハァ、ハァ、これは駄目だ。アレを使うしかないか」


 ケイオスはリュックサックから薬瓶を取り出して、それをグイッと飲んだ。


「ぐうぅッ! ・・・・・・よし、行けるぞ!」


 すると途端にシャキッとして、急に立ち上がり足早に歩きだした。

 あっという間にロジャーを追い抜いて先を行き始めたので、慌てて後を追う。

 錬金術のポーションというものは本当に凄い物で、そこから夕暮れまで平気で歩き通してしまった。


「ケイオスさん! そろそろここらで野宿にしましょう!」


 ずんずん先に行ってしまうケイオスを呼び止める。休憩無しで歩き続けた為、今やロジャーの方がへばりそうになっていた。

 山の中でもう辺りは真っ暗である。身体は疲れ切っていたが、早急に火を起こして野宿の準備をしなければならない。斜面でも比較的開けた場所に荷物を置いた。


「君は先を急ごうと言っていたじゃないか。もっと先に行かないか?」


 やけに鼻息荒くケイオスがそう言うのでロジャーが答えた。


「夜の山道は危険です。肉食の獣は夜目が利きますから。気温も、大分低くなってきました。火に当たって身体を温めなければ」 


 冬の山はしんしんと冷えている。二人の吐く息が白い。

 元々吸血鬼だからケイオスは夜道に慣れているのだろう。寒さにも強いつもりでいる。

 しかし今は彼も人間の身体だ。薬の効いた感覚で大丈夫だと思っていても、実際には身体が寒さに耐えきれる訳ではない。このまま休まず歩いては危険だった。


「薬が切れないんだ。身体が熱い。このまま地の果てまで歩いて行けそうだよ」

「知りませんよそんなの! 変なのを飲まないで下さいよもう!」

「ぐうぅッ!熱い! これは駄目だ。解毒剤! 早く飲まないと!」


 ケイオスがポーチから薬瓶を取り出す。


「大丈夫なんですかそれ?!」


 ロジャーは顔をしかめた。

 錬金術で作った薬というのは多くの場合副作用がある。身体にとって毒である事が多いのはロジャーも知るところだ。

 薬の毒性を更に薬で打ち消していくのは危険だ、と師匠に教わった事がある。

 ケイオスは解毒剤を勢い良く飲んでからこう言った。


「ロジャー君、じきに私はすぐ気を失うだろう。近くで火を焚き、温めて欲しい」


 それだけ言うと膝から崩れ落ちるように倒れて動かなくなった。白目を剥いて、口から泡を吐き続けていた。



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