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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
一章:魔獣討伐の旅
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第016話 「待ち人来たらず」

 巨大な怪物の話をされてロジャーは心底嫌そうにした。


「僕なんて一口で喰われそうな感じですけど」

「ああ。でもまあ、まず出くわすこたぁねえだろ」


 師匠が言うには、ロジャー達に期待するのは主に聞き込み調査なのだという。

 キマイラはどの辺りで目撃されたか、去る時はどの方角に行ったか等、現地の村や集落を回る地味な活動になるだろうとの事だった。

 師匠は先に現地へ飛び、単独でキマイラの捜索に当たる。

 その間にロジャー達は行動を共にする仲間と三名で合流し、その後北の城塞都市ウェストリコに向うよう指示された。

 そこで一旦捜索から戻ってきた師匠と合流する手筈だ。その時既に師匠がキマイラを見つけていれば、もうロジャー達の役目は終わる。


「ともかく大体どの辺りに出没するのか、全部地図に印を付けて来てもらいてぇんだよ。後は俺が何とかするから」


 まあ後の細かな指示は、師匠と合流した時に改めて命ずるとの事だった。

 キマイラとの交戦は多分無いだろうが、あったとしても魔物狩り三名で防戦すれば、追い返す事くらいなら出来るだろうと師匠は言った。

 ロジャーとしては嫌な予感がする話ではあったが、ともかく師匠がキマイラを何とかするというので納得するしか無い。

 今日は旅支度をして一日身体を休め、明日の昼頃から出発だ。

 本来は早朝から出るのが良いが、どうやら師匠の言う助っ人の一人がこちらに向かっており、それが遅れているのだという。



□■□■□■□■□■□■□■□■



「っかしーなぁ。予定じゃ昨日来る筈だったんだが」


 翌日になり、昼を過ぎても件の人物は現れない。師匠が焦れて機嫌が悪くなってきた。


 そこから日が沈んで夜になり、二人は庵の中でする事も無く囲炉裏の火に炭をくべて暖を取っている。


「・・・・・・来ねえ! 来ねえぞ! どうなってんだ!」


 食料はとっておいてもダメになってしまうので、出来るだけ全て保存食にして残りは処分してしまった。

 当然今夜食べる予定の夕飯など無いので、二人は霞を食っている。

 比喩ではなく仙術流派の技である。

 この技は周囲にあるマナを口から吸収し身体に栄養として流すもので、身体と魔力の回復に効果が有り、ついでに空腹も満たす。

 但し食物を食べている訳ではないので、あまりこれに頼ると本来の栄養素が足らずに身体は痩せ細っていってしまう。仙術流派の使い手が痩身になる理由でもある技だ。

 それでも飢えに苦しむよりはマシなので、二人してスースーやっていた。


「待つって意外と苛々しますね」

「ああ。こうしているなら別の依頼のひとつでもこなしに行けば良かったな」


 ロジャーには知る由もないが、アイザックが仕事を受けてくる先は王国の要人も存在する。依頼を受けておきながら達成せず無視した場合は宜しくない。


「チッ!今日はもう寝るか」


 仕方なくランプの灯を消し、二人は布団を敷いて床に就く。


「・・・・・・苛々して寝れんな」

「ですね。でも仕方無いです、寝ておきましょうよ」


 しばらくシーンとする。

 その後、静寂の中で師匠が呟いた。


「明日はもう待てんぞ。来なくても出発だ」

「はい」


 ロジャーはまどろみに落ちていった。



□■□■□■□■□■□■□■□■



 次の日の早朝。

 昼まで待つかどうか二人は相談し、師匠は先に出発する事になった。


「お前も昼過ぎには出ろ。予定が遅くなり過ぎる」


 師匠はこれから来る人物と次の目的地について、ロジャーに伝えた。


 本来なら本人が庵に到着してからお互い自己紹介などをするつもりだったので、どんな人物なのかをまだ話していなかったのだ。

 ケイオスという名の、闇流派の魔物狩り。この流派は吸血鬼の真祖の一族に伝わる闇の魔法と、精神幻惑系の超常的な力を行使する強力な魔法使いだと師匠は説明した。


「今、吸血鬼って言いました? 大丈夫なんですかそれ」


 ロジャーが訝しむと師匠は明朗な口調で答える。


「大丈夫だ。奴等は王国から認められた魔物狩りでな。国から送られてくる罪人の血以外飲まない。そういう取り決めをしている」


 そんな存在がある事をロジャーは知らなかったので、大丈夫だと言われても少し心配であった。

 しかし話を聞いていくと、どうやら古くからの付き合いがあるらしい。


「そいつは俺の親友、デニスの弟子だ。中々の使い手だっつーから、居てくれりゃあ心強いかと思ったんだが・・・・・・まず来ねえんじゃあどうしようもねぇ」


 それはさておき、次の目的地はもう一人の助っ人が居る村だと師匠は言った。

 村の名は鬼哭き村。半分鬼で半分人の混血人種の村だそうで、そこに剣の腕が立つアーロンという男が居るという。

 ケイオスが来なければロジャーは鬼哭き村に独りで行かなければならない。もう名前だけでちょっと嫌な予感がする。

 ロジャーは待てる限りケイオスを待とうと思った。


「じゃあな。道中、気を付けろよ」


 一通りの話を終えると、師匠は先に庵を出ていった。

 ロジャーはまだ敷いたままになっている布団に転がった。こういう時でないとダラダラする事は出来ないのだ。思い切り布団を被る。

 冬は朝に布団から出たくないものだ。ロジャーは惰眠をむさぼった。


 仙術流派呼吸法中級技『霞食い』

 周囲に存在するマナを吸い込んで糧とする技。まるで霞を食しているように見える為「仙人は霞を食べて生きている」などという噂の元になった。

 人の手が入っていない自然界などで特に濃密なマナを取り込めるが、穢れた場所では汚れたマナを吸ってしまうので注意が必要。

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