第012話 「告白、ロジャー視点」
(ロジャー視点)
二人きりだ・・・・・・! 今しかない!
僕はありたっけの勇気を振り絞り、リーナさんに声をかけた。
「あの・・・・・・リーナさん、っていう名前、なんですね」
ダメだ、どうしてもうわずって変な声になる。
「良い名前、ですね」
彼女は何も応えない。代わりに鼻をすすっている音がする。錬金台に向かって何やら作業をしているようだが、あまりはかどってはいない様だった。
「あ、僕、ロジャーっていいます」
「・・・・・・」
「泣いてるんですか?」
「・・・・・・」
「何か、辛かったですか?」
「・・・・・・」
静かに泣いている彼女は、何を聞いても応えてはくれなかった。
僕はすっかり焦れてしまい、一気に本題に入ろうと決めた。
「僕は貴女が好きです。それで今日ここへ来たんです」
彼女は目を見開いて一瞬僕の顔を見た。すぐに顔を背けてしまったけど。
「それで、その、つ、つき合ってもらえませんか」
自分でも思うけどこの告白は下手過ぎた。やはり彼女には何も応えてもらえず、気まずい時間が過ぎていく。
「あ、その、あの、今後は、何度でも、ここへ来ますから。用事を作って。だから今、お返事を無理に、してもらわなくても・・・・・・大丈夫、です」
とにかく沈黙はまずいと焦る様に、僕はたどたどしくも話し続けた。するとついに彼女が重たい口を開いた。
「あんな人の関係者は、嫌です」
「え? 今、何て?」
僕は一瞬意味が分からなかった。
しばらく遅れて理解する。・・・・・・師匠の事だ。リーナさんの言うあんな人というのは絶対そうだ。
「貴方は悪い人じゃないでしょうけど、あの人のお弟子さんなんですよね?」
うっ。やっぱり。僕は師匠の弟子である事をとても後悔した。
「だから、貴方とはつき合えません」
打ち据えられる思いだった。頭がドカッと重たくなって、クラクラする。
だけどしっかりしなきゃ。今このまま会話が終われば、確実に彼女との縁は断たれる事になる。僕はどうにかならないかともの凄い速さで思案を巡らせた。
「あっ、あっ! じゃあ! 僕は師匠の弟子を辞めます!」
「えっ?!」
思えば今まで師匠と一緒に居てもろくな事が無かった。きっとこの先もそうだろう。なら、これを機に別れた方が良いんじゃないか。
もしかしたらこれは神の与えたチャンスなのかも知れない。ロジャーよ、ここらが潮時ですと。僕にはそう思えてきた。
「それなら僕は師匠の弟子を辞めます。そうしたらつき合ってくれますか?」
大事な事だったから改めてそう言ってみた。
口に出してみると存外清々しい気持ちだ。長年の鬱積が溶けて消えていく様な、不思議と晴れやかで良い心持ちになってきた。
そうか。もっと早くこうしていれば良かったんだな。僕はもっと内なる声に従って行動すれば良かったんだ。
「えぇ・・・・・・そんな事をして大丈夫なんですか?」
眉間にしわを寄せ、リーナさんはとても怪訝そうな顔をした。
「大丈夫です。よく考えてみたら僕に何の損も無い話です。問題ありません」
僕は即答する。
拷問のような肉体改造、厳しい修行、厳然たる師弟関係。そのどれもが僕を駆り立てるのだ。今こそ全力で逃避行する時だと。
「僕と逃げませんか。僕はリーナさんを一生大切にします」
「わ、私はここに居たいんです! 逃げるだなんて必要がありません!」
むっ、そうだったのか。さっきはあんなにパコンパコン殴られていたのに。師弟関係なんてどこも似たようなものだ、と思っていた僕は少しひるんだ。
「大体貴方はステラ聖教の信徒ではありませんし・・・・・・私おつき合いするなら信徒の方、ってずっと決めていますから」
今度は宗教の壁か。でもそんなものは、愛の前に障害たり得ない。
「じゃあそのステラ聖教に入信すれば、つき合ってもらえるんですか」
「ええっ?! 入信するんですか?」
何としてもつき合いたい。僕はグイグイ押した。その為ならどんな障害も厭わないぞ。
「はい。リーナさんとつき合えるなら何だってします。貴女は僕の女神です」
「め、女神様だなんて恐れ多い! いけませんそんなの!」
リーナさんは慌てた様に両手をわちゃわちゃさせて否定している。よし、動揺している! あともう一押しだ。
「私は貴方の事を何も知らないし、いきなりそんな・・・・・・」
「僕の事ですか? じゃあ、教えたらいいんですね?」
僕は彼女に詰め寄った。今やさっきの劣勢を跳ね返して優勢なムードだ。
全てを投げ打ってでも彼女を手に入れるぞ。覚悟は決まってる。
次回、リーナ視点。
この二回のみ、同時に上げます。




