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第97話 死神の思惑

 更にアロ様は距離を詰めてくる。もう、私は壁際まできてしまった。

「命の代償は命、僕と君の命で少しでも補えば、死神も少しは納得してくれるかもしれないよ。さあ、一緒に死のう」

 アロ様は私の首に両手をかけようとする。アロ様がこんなことする?こんなのアロ様じゃない!

「やめて!!あなたは誰?」

 バチッとアロ様の手が弾かれた。加護のペンダントが防御したようだ。

[ああ、厄介なものをつけているね。これでは手が出せない]

 アロ様から違う人の声が響いたと思ったら、ぐにゃりと輪郭が崩れ、違う人の形をとった。

「ラ、ランドール先生……」

[あはは、先生ではないよ。改めまして、死神ランドールと申します。マリアローズ、君の命を私にくれないかい?]

「命を?そんなの嫌です」

[そうか、それは困ったね。君が死者の数を減らすから、こちらは困っているんだが、その責任はどうやって贖ってくれるんだい?]

『待つのにゃ。ランドール。それは不可抗力なのにゃ。マリアの命で贖うのは違うのにゃ。それに聖女マリアとして活動して、かなり経つのにゃ。なぜ今なのにゃ?』

[おや、ラーラか?なんだその姿は。まあいい、こちらにも都合があるのさ。見たところ、マリアローズの魂はこの世界のものではないのだろう。勝手にこちらに連れてきて、転生させ女神の愛し子にした。そのため、神の理にふれて、癒しの力が規格外になったのだ。本来、死者の運命まで変えるほどの癒しの力なんてあり得ない]

『それは、ごめんにゃ』

[謝られても、なあ。そんな簡単にこちらも納得は出来ない。命を貰って来いと、うちの上司がうるさいのさ]

『それはダメにゃ。何か違う方法はないのかにゃ?』

[そうだな、実は一つ困ったことを抱えていて、それを解決できるなら上司も納得してくれるかもしれない。もちろん、今後死に行く者の癒しは禁止にすることも受け入れて欲しい。決して運命は変えてはならない]

『わかったにゃ。それで、その困ったこととは何にゃ?』

[実は、死者の魂が迷子になってしまっていて、探しているが見つからない。その魂は少し変わっていてね。すぐに回収したい。ある程度の場所はわかるんだよ。でもそこが厄介な場所でね]

『どこにゃ?』

[竜の谷さ。ユリゲーラ国とカーネル王国の国境にそびえるルラーゲ山脈の中腹にある谷。ドラゴンたちの住みかだよ]

『な、竜の谷⁈そんな危険な場所に探しに行けと言っているのにゃ?』


 ローズウィル国はユリゲーラ国とカーネル王国に接している。ローズウィル国からカーネル王国やユリゲーラ国に行くのはほぼ平地だが、ユリゲーラ国とカーネル王国は高くそびえるルラーゲ山脈で隔てられているため、それぞれの国に行くにはローズウィル国を経由したほうが楽に行ける。それで、シャルくんがユリゲーラに行く途中グラン領を通過したのだ。グラン領は、国境に近い所にあるから。

 そして、ルゲーラ山脈をみんなが通りたくない一番の理由が、竜の谷があるからだ。竜の谷には、大小あわせて200匹のドラゴンが生息すると言われている。基本的にドラゴンは気性が荒く、人を襲う生き物だ。しかし、普段から山脈周辺を住みかとして、ほとんど人間の住みかには近寄らない。なので、年間の被害も数件程度だ。人とドラゴンはめったに遭遇することがないからだ。


[もちろんさ。それが条件だ。その魂を見つけて私に渡してほしいのさ。そうしたら、今回はマリアの魂は諦めるよ。どうだい?]

『そんなこと、危ないのにゃ。無理にゃ』

[では、今すぐにマリアローズと、アロイスの魂を貰っていこうか]

「待ってください。アロイス殿下の魂もですか?私は仕方ないと思います。でも、なぜアロイス殿下まで……」

[婚約者なのだろう?もともと魂は君だけでは足りないのさ。まあ、少しでも多く貰いたいからね。連帯責任を取ってもらおうかと]

「わかりました。迷子の魂を探してきます」

『マリア、そんな無茶にゃ』

「でも、やらないとアロ様が死んでしまう!それだけは駄目」

『……そうだけどにゃ。ランドール、その試練は、誰が手伝ってもいいのにゃ?ルールにも手伝って欲しいのにゃ』

[ああ、ルールはある意味当事者だろ?魂をこちらに連れてきたのはあいつだし。ただし、期限は切らせてもらおう。一か月以内でよろしく]

『……短いのにゃ。何故そんなに急ぐのにゃ?』

[まあ、いろいろあるのさ。これでも最大限譲歩しているよ。迷子になってかなり経つんだ。一か月以内でギリギリなんだよ。それ以上経てば、魂は消滅するか、闇堕ちするか……そんなことになったら、上司自ら君たちの魂を取りに来るかもしれない]

「……あの、上司って誰ですか?」

[ああ、冥王様さ。冥界を統べる神だよ。ほんと、死神使いが荒くてさ、時々逃げ出したくなるよ。じゃあ、そういうことでよろしくね]


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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