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第96話 厄介な者とは

「おかえりマリア。補習は大丈夫だった?」

 部屋でリリと遊んでいると、アロ様が訪ねて来てくれた。

「あ、はい、補習は大丈夫でした。アロ様は神学の臨時講師のランドール先生ってご存じですか?すごく美形の男性なのですが」

「すごく美形……。あ、いや、神学はドイル先生しか知らないな」

「そうですか、ドイル先生が体調不良で臨時に来られたようなのですが……」

「どうかしたのかい?」

「いえ、いい先生だとは思うのですが、なんだかずっと観察されているような気がして落ち着かなかったのです」

「それは、不快だね。ドイル先生は今朝見た時は元気そうにしていたし、何かあったのかな?僕のマリアを観察するなんて、ちょっと許せないな」

「あ、いえ、気のせいかもしれませんし、明日は歴史なので、もう会うこともないと思いますから、大丈夫です」


 そう思っていたのに……

「こんにちは、グラン嬢。今日は歴史のピピン先生が体調不良で、私が臨時講師になりました」

 爽やかな笑顔でそう言ったランドール先生に、ゾワリと背筋が冷えたのはどうしてなのか……歴史の授業もわかりやすく、臨時講師を兼任できるだけの説得力はあった。


「ただいま。ララ」

『おかえりにゃ。マリア、なんだか顔色が悪くないかにゃ?それに、やっぱり匂うのにゃ』

「え、また?」

『この後、ルルーシェが来るのにゃ。嗅いでもらうのにゃ!』

「ええ、それは嫌だよ。嗅ぐなんて……」

『大丈夫にゃ、近づかなくてもプンプン匂うのにゃ!!』


「確かに匂うな。これは、」

「ええ、何が匂うのですか??」

 あれからすぐに、ルルーシェ様が部屋に現れた。本当にびっくりするから、せめて、扉から入ってきて欲しい。とお願いした。

『やっぱりにゃ、なんであれがマリアに近づくのにゃ』

「まあ、理に反することをしているのだから、あれが気にするのもわかる気はするが……」

『このままだと、マリアが危ないのにゃ!!なんとかするのにゃ!』

「あの、何が危ないの?」

『マリア、昨日と今日会ったのは誰にゃ?今までに会ってない人物にゃ』

「え、それは、臨時講師のランドール先生かしら?」

『ランドール……』

「やっぱりか、マリアは死神に目をつけられたようだな」

「えええっ死神??あの死神?」

『とりあえず、アロイスも呼ぶのにゃ』


「マリアが、死神に狙われている?何故そんなことに……」

「ああ、ある程度わかってはいたが、たぶんマリアの癒しの力が強すぎるのだ。同じ愛し子であるブラットフォードでも、マリアの様に癒しの力を使っても、死に行く者までは助けられない」

「え?死に行く者??」

『マリアは無意識に死ぬ運命の者まで助けていたのにゃ。それが死神の目にとまったのかもにゃ』

「理を曲げてしまうのはまずい。死神はマリアの命を狙うかもしれない。まさか、自分もここまで癒しの力が強いとは想定していなかった」

「どうしたらマリアを助けられる?死神とは、神ではないか。人間の僕に勝ち目はあるのか?」

『まだわからないのにゃ、目的がマリアの命なのか、違うものなのかもしれないのにゃ』

「とにかく気をつけてくれ。加護のペンダントは二人とも絶対に外さないでくれ」


 とんでもない事をしてしまった。自覚はないとしても、神の理に触れてしまったのかもしれない。そう思うと、ベッドに入っても目が冴えて眠れそうになかった。

 バルコニーの窓から、コンコンと音がする。暗がりの中、目を凝らすとそこにはアロ様がいた。慌てて窓を開けて、中へ招き入れた。

「アロ様、どうしたのですか?」

「君が眠れないかと思って。大変なことになったね。僕が出来る事なら、何でもするよ」

「ありがとうございます。アロ様」

「ねぇ、マリア。責任を感じているのかい?」

「そうですね。無自覚とはいえしてはいけない事をしてしまったのだと責任を感じています。でも、どうしたらいいか分からなくて」

「そうか、では僕と一緒に死なないか?」

 アロ様は、そう言うと私の方へ近づいてきた。いつもと雰囲気の違うアロ様が怖くなって、私は少しずつ後ろに下がって距離をとった。

「え……?アロ様、何を言っているのですか?」


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