第94話 子猫はリリです
すっかり元気になったララは子猫を見て、にんまりと笑ってこう言った。
『名前は、リリにするのにゃ』
「え?なんでリリ?」
『ララとルルの間なのにゃ』
それは、ラリルレロのこと?それは、日本語だ。やっぱりララは転生者なのかしら?
「そうか、自分とララの子か。照れるな」
ルルーシェ様のつぶやきも気になった。なぜ、ルルーシェ様が照れているのか?本当、謎が多い人だ。
白猫ララを心配していたみんなは、子猫を見て、元気がなかったのは妊娠していたからだと納得したみたいだ。相手の猫が誰か?と話題になっていたが、まあ、そんなものはいないので、そのうち落ち着くだろう。
可愛い子猫のリリは、王宮のマスコットとして可愛がられている。例のごとく、子猫はお菓子しか食べなかった。親子そろって、お菓子しか興味がないのは不思議だわ、とメイドが話していたが、まあ、そういう生き物なのだと認識されているみたいだ。
「ねえ、ララ。リリはそのうち話すの?」
『う~ん、分からにゃいのにゃ。普通の猫かと思っていたのにゃ。でも、リリもお菓子しか食べないのにゃ。たぶん、食べなくても生きていけそうにゃ。お菓子は美味しいから食べてるだけにゃ』
「そっか、食べなくて生きていけるのなら、普通ではないね。気をつけないと、猫じゃないってバレてしまうかも……」
『私と同じ生き物だと思われているのにゃ。たぶん、ここでは大丈夫だと思うのにゃ』
王宮の使用人やメイドは、ものに動じない人が多いのか、ララのことをそういう生き物として扱った。きっとリリもそのようにしてくれそうだ。
「とりあえず、いろいろ落ち着いてよかったわ。ララがずっと寝ていたら寂しいもの」
「ありがとにゃ。マリアが幸せになるまで、私は絶対見守るのにゃ!!」
「ねぇ、前から気になっていたのだけど、どうしてララはそんなに私によくしてくれるの?」
『それは……詳しくは言えないのにゃ。でも、これは私の願いにゃ。マリアには絶対幸せになって欲しいのにゃ』
「ありがとう、ララ。頑張るね」
前期がもうすぐ終了する。長い夏休暇をとり、後期が終われば、残すは卒業式と祝賀舞踏会だけだ。あと、もう少し、何事もなく無事に卒業できますように。