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第93話 白猫の様子が変です

 次の日、ローラ様から癒しを施してもらい、これでもう大丈夫というお墨付きをもらった。やっと外に出られる。ララの様子が気になっていた私は、さっそく部屋を出ようとしていた。そこに、アロ様がやって来た。

「ローラ嬢から、今日から部屋を出ていいと聞いて来たんだ。マリア、ララは神殿にいるみたいだ。従者が言うには、メイドが渡していた菓子も食べないそうだ。どこか悪いのかもしれない」

「そんな……でも、ララは……」

 女神様が病気になるの??

「あの、すぐに王宮内の神殿に行っていいでしょうか?」

「ああ、僕も一緒に行こう」


 神殿は国中にあるが、一番大きいのは王都にある神殿で、ジャコブ大神官様や、聖女ローラ様がいるのもそこだ。グラン領にも神殿はあって、領民はそこで結婚の誓いをたてたりする。王宮内にも同様に神殿があり、そこは主に王族の儀式のために使うことが多い場所である。

 以前からララは、王宮内の神殿に出入りしていた。パワースポットのような清浄な空気がながれているそこは、疲れた時にもってこいの場所だと言っていた。


「ララを探して」

 以前ルルーシェ様にもらったララを探すための魔石に念を送った。金色の光は、スゥーと伸びて、女神様像がある場所まで続いているようだ。急いで、光をたどっていくと、そこには眠っているララがいた。

「ララ、ララ?」

『……マリアだにゃ。ごめんにゃ。眠いのにゃ』

 そう言って、またララは寝てしまった。神殿の方が居心地がいいのだろうと、そこにクッションや毛布を持ち込ませてもらい寝床にした。メイドや使用人が様子を見守るからと、病み上がりの私は部屋へ戻されてしまった。さっき見たララのしっぽの先は黒からグレーに変わっていた。

 最近、ルルーシェ様も見かけていないし、誰に相談したらいいのかしら?このまま放置して良くなるとは思えない。まさか、獣医さんに診せるわけにもいかないし。

「マリア、大丈夫?あまり気にしすぎて、君がまた倒れてしまったら困るよ」

「アロ様、こんな事初めてで、どうしたらいいのか……」

「そうだな、ユリゲーラ国のブラットフォード殿下に手紙を出してみようか?もしかしたら、殿下からルール様かルルーシェに伝えてもらえるかもしれないし」

「そうですね。すみませんが、そうしてください」

 すぐに手紙を風魔法で届けると言って、アロ様は出て行った。

「……ララ、本当に大丈夫よね?」


 夕日が落ちる頃、部屋にルルーシェ様が現れた。突然のことでびっくりしたが、急いでアロ様に連絡を取って、一緒に神殿まできた。

「おい、ララ。何をしている、起きろ!」

『眠いのにゃ、うるさいのにゃ~、ルル』

「まったく、お前は。こんなことになる前に早く言えよ」

『封印は嫌にゃ。マリアの幸せを見届けるのにゃ~』

「ああそうか。でもこのままでは、ずっと眠り続けることになるだけだぞ」

「ルルーシェ様、どうしたらいいのですか?」

「多分、黒いモヤがララに馴染みきれてないんだ。黒いモヤを異物ととらえて、存在するのを無理やり抑え込んでいるから、体力を奪われて眠り続けるんだ。しっぽが黒からグレーに変化しているのは、浄化が進んでいるからだろう。でも、このままではララがもたない」

「そんな……」

「もう限界だろう。これは、自分が滅しよう」

『ダメにゃ。これも私の一部なのにゃ。滅するなんてできないのにゃ』

「ララ……」

「じゃあ、一か八かの賭けになるが、そいつを産んでしまえ」

『にゃ?産むのにゃ?』

「え?赤ちゃんがいるの?」

『そんなわけないのにゃ。無実にゃ』

「ああ、モノの例えだ。今のそれなら、ララの中から切り離しても、もう力もないし悪さも出来ないだろう」

『そうにゃ、でも力を奪われるのにゃ』

「だから出すんだ。そうだな、子猫の形にしてしまおう。お前も猫だし、丁度いいだろう。マリアローズ、力を貸してくれ。癒しの力をしっぽに集中的に集めてくれ」

「はい、やってみます」

 ルルーシェ様と私はしっぽに手をかざした。ララも苦しそうにしている。本当にお産しているみたいだ。やがて、しっぽの先が光りだして、その光が子猫の形を作り出した。そして、グレーの毛並みの可愛い子猫になった。

『にゃうん』

 子猫が可愛く鳴いた。

「ふう、どうやら成功したようだな。ララ、大丈夫か?」

『大丈夫にゃ。お母さん猫になったのにゃ~』


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