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第92話 納得は出来ません、説明を求めます

「じゃあね、お転婆マリア。いつか君のこと、友人だと思えるようになったら、また会ってくれる?その時までお別れだね。早く元気になって。さようなら」

 そう言ってシャルくんは次の日には学園を退学して、そのまま帰国してしまった。


 私は、アロ様に連れられて、王宮へ戻って来た。衰弱は深刻で、その間ローラ様がずっと付き添って癒してくれていた。

「お役に立てて、少しは恩を返せてよかったです。でも、こんな状態になるようなことはしないで欲しいのです。それで……殿下と仲直りしたのですか?」

「……あれから会えてないのです。ずっと寝込んでいましたし、まだ私の中ですっきりできない部分があって」

 シャルくんのお陰で、アロ様への気持ちは定まった。でも、アロ様が私を手放そうとしていたことに、まだ、心が納得していなかった。いや、たぶん納得できない。

 私が言った、婚約は破棄の文言は、ケンカした時の戯言として処理されていて、なんだかそれも納得できないのだ。あの時私は、本気でもう駄目だと思ったのだから。そのことを無かったこととして処理されても、私の中では処理できなかった。

「そうですか。私は、体は癒せても心は癒せません。マリア様が殿下としっかり話し合ってください。そして、心も元気になれますように、祈っておりますわ」

 さすが、聖女ローラ様。最近は不動の人気だと聞いている。なんだか私も癒された気がした。早くしないと誰かにもっていかれそうだ。ロイド様大丈夫かな?

「明日も来ますので、安静にしていてくださいね」

 そう言って、ローラ様は帰っていった。少し疲れたのか、私もそのまま眠ってしまった。


「ごめん、マリア……」

 アロ様の声に目が覚めた。瞼は重くてまだ閉じていた。どうしよう、これは目を開けるべき?迷っている間にアロ様は一人私に話しかけている。

「僕が自信を持てないばっかりに、君に辛い思いをさせた。君は僕をちゃんと愛していてくれたのに、それを信じることが出来なかった。僕は婚約者失格だ」

 一人懺悔するアロ様に、ますます目を開けづらくなってきた。しっかりと握られた手に汗をかきそうだ。こんな時、ララが飛び乗ってくれたら起きることが出来るのに、最近ララは部屋に来ていない。気になってメイドに聞いたが、神殿にいるところを見たが、王宮にはあまり出入りしていないそうだ。元気になったら探しに行こうと思っている。

 そろそろ限界を感じて、目を開けた。

「あの、アロ様」

「マリア、気分はどう?ローラ嬢から、かなり回復したと聞いて、様子を見に来たんだ」

「はい、ローラ様のお陰で、よくなったと思います。もう、起き上がれると思うので……ララの姿が見えなくて、探しに行きたいのです」

「ララか……後で従者に探させるから、君はもう少しゆっくりしていて。衰弱がかなり進んでいて、本当に危なかったんだ……僕が不甲斐ないから、君をこんな目に合わせてしまった。マリア、許してくれ」

「アロ様、私かなり怒っているのです。なぜ、あの時、私がいいなら、そうなるって言ったのですか?私はアロ様にとってそのような存在で、必要ない人間ですか?」

「違う!!僕はマリアを愛している。ずっと側にいたいと思っている」

「では、なぜ?あのような発言を?」

「そ、それは、白猫がそう言ったから。マリアが好きになった方と結ばれると。国や、地位は介入できないと言われて、僕は急に自信がなくなった。ずっとマリアの婚約者だった。でもそれは、何の意味も持たないのだと、そう言われた気がして、マリアは自由で、僕は無力だ。愛されている自信が持てなかった……」

「私たちの年月は?それに私はアロ様が好きだと、ずっと言っていました。それを信じてくれなかったことが悲しくて、悔しくて、だからもう一緒にいれないと思いました」

「そ、それは、本当にごめん。でも、僕はマリアがいないと生きていけない。いっそここで殺してほしい」

「えええ?それは嫌です……」

「……」

「そんなに想ってくださっているなら、そう言って欲しかったです。アロ様が自信を持てなかったのは、私とシャルくんのことがあったと思いますが……」

「ああ、ハリス公子が洞窟でのこともちゃんと説明してくれた。ハリス邸に僕がいたのも、ハリス公子が君に迫って君の本音を僕に聞かせたのも、全部君の無実を証明するためだと思う。だから、彼には敵わないと思ってしまうんだ。でも、これからは、絶対にマリアを諦めない。ちゃんと愛しているって伝えるよ。君を失う恐怖は二度と味わいたくない」

「私も、アロ様に婚約破棄と言ってしまって後悔しました。沢山迷惑もかけてしまってごめんなさい」

「マリア、僕の方こそ、すまなかった。君を手放せるなんて考えた僕が愚かだった。絶対手放せないって今回のことで痛いほどわかった。愛している」

「私も、愛しています。ずっと側にいてください」

 弱った体を労わる様に抱きしめてくれるアロ様の温もりに、強張っていた心がほぐれていくようで、ホッと息を吐いた。


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