第89話 揺れる想い
あれからアロ様を避けてしまっている.
登下校は一緒の馬車だが、まったく会話がない。アロ様も何か話しかけようとしているようだが、そのたびに黙ってしまうのだ。私からは話しかけられず、お互いに何も言えない状態。そんな感じだ。
「ごきげんよう、マリア。どうされましたか?ため息なんてついて」
「リリー、あの、ですね、少し相談に乗っていただいてもいいですか?」
「ええ、もちろんですわ。今日は、妹と遊ぶ約束もないですし、ゆっくり出来ますわよ」
「では、放課後に教室で」
そして、放課後、みんなが帰宅した教室でリリーに相談をすることにした。自分ではもうどうしていいか分からなかった。
「は?ハリス公子にキ……」
「しーっ静かに!!」
「あら、失礼。思わず取り乱しましたわ。それで?」
「シャルくんに告白をされました。そして、そうなったのです」
「まあ、それは……そうですのね」
リリーも微妙な反応だ。
「それで、抱きしめられているところに、アロ様が来て」
「ああ、それは大変ですわね。殿下は怒っておられるのですか?」
「それが、何もなくて、ずっと無言で何かを考えているみたいで……私もごにょごにょ、されたなんて言えなくて、避けてしまっているのです」
「それは悪循環ですわね。お互い何を思っているか分からないまま避けるなんて。これでは、マリアは隙だらけですわ。ハリス公子のチャンスですわね」
「そんなことには、なりません。シャルくんがなんで私を好きだなんて言ったのかもわからないし、アロ様が何も言わないのもわからない。私もこのままどうしたらいいか……」
「そうですわねぇ。私なら、とりあえず殿下の誤解を解きますわ。まずはそれからでは?」
「でも、キ……されたのは事実です。それは、どうするのですか?」
「私なら、言ってしまいますわ。隠していて、もしバレてしまったら、そちらの方が大事になりそうです。もちろん不可抗力だと説明します。殿下なら嫉妬はしてもわかってくださるのでは?」
確かにこのままは嫌だ。キスされたと話せるかはわからないが、兎に角アロ様と話をしよう。
「ありがとうございます、リリー。頑張ってみます」
「ええ、出来るだけ早い方がいいですわ。最近殿下の機嫌が悪くて執務が滞っているってチャールズ様が言っていましたし」
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