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第85話 シャルくんの告白

シャルくんは、いつもより緊張した顔で私を見ていた。それに、カーネル王国に行く?

「どういう意味?遊びに行くの?まさか住むとか?私はローズウィル国の女神の愛し子だから、移住とかできないような気がするのだけど……」

「いや、そうではなくて。僕のお嫁さんになってくれないか?」

それは、前にも言われたことがある。あの時は冗談だと思っていた。でも今は……シャルくんは、そう言って私を抱きしめた。私はかなり混乱していた。

「ずっと君を好きだった。このまま、冗談にして本当の気持ちを伝えずに帰るのは嫌だった。マリア、お願いだ、僕のことを好きになってよ」

突然の告白に固まった私に、シャルくんはそっと触れるだけのキスをした。

「あ……」

びっくりした。本当にびっくりすると人は動けなくなるのかもしれない。

「ごめん、でも、僕を嫌いにならないで。好きなんだ。さっき言ったこと考えてくれないか?」

すがるように抱きしめられたまま、私はどうしてこんなことになったのか考えていた。私より、シャルくんの方が震えていた、だから振り払うことも、逃げ出すことも出来ずにいた。

1つだけ分かったことは、シャルくんに告白されてキスをされたという事実だけだった。


「マリア!!」

アロ様の声が聞こえて、正気に戻った。

振り返ると、洞窟の奥からアロ様が白猫を抱えて走ってきていた。そして、奪い取るようにシャルくんから私を引きはがした。

「貴様っ何をしている!!」

「……ああ、殿下。ずいぶん早かったですね」

「マリアに何をしたんだ」

「そうですね、マリアに僕の気持ちを伝えて、キ……」

「駄目っ言わないでっ」

アロ様にキスされたことを知られたくなかった。私がぼんやりしていたからこんなことになってしまった。アロ様の顔を見ることが出来なかった。見てしまえば、キスされたことが知られるような気がしたから……

「……マリア、帰ろう。みんな心配しているから」

「……はい」

「ハリス公子も、マリアを助けてくれて感謝する。ついてきてくれ。こちらから出られる」

そうして、私たちは無事地上へ戻って来た。でも、今までのような友達関係には戻れないのだと、無言のまま出口を目指している時に、そう思った。


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