表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/121

第84話 シャルくんの態度がおかしいです

「マリア、おはよう。今日も可愛いね」

「……お、おはよう。シャルくん、どうしたの?」

「え、何が?」

「あの、可愛いとか突然言い出して、最近変だよ」

「そう?思ったことをそのまま言っているだけだよ」

今日も輝く王子様スマイルで、周りの令嬢から熱い視線を集めながら、シャルくんは平然と言い切った。いや、今までそんな事言ってなかったよね?明らかに3年生になってから態度が変だ。今までも、アロ様を挑発するような態度をとることもあったけど、冗談だと思っていた。でも今は、どこか真剣な声音にドキリとするのだ。

「僕のマリアから離れてくれないかな、ハリス公子」

「おっと、殿下。おはようございます。僕はマリアの友人でしょう?話しかけるのはいいのではないでしょうか」

「そうかもしれないが、最近の公子は度が過ぎるように思う。何か企んでないか?」

「ひどいですね。ただの挨拶ですよ。では、お先に」

「……マリア?」

「やっぱり、変ですよ。冬休暇の時に何かあったのかな?アロ様、心当たりが…?」

「あ、いや、ないよ」

歩いていくシャルくんのうしろ姿を見ながら、いろいろ考えてみたけど、私にも心当たりがなかった。


昨日の雨が嘘のように、今日は晴天に恵まれた。私たちは魔法薬の課外授業で王家直轄の森へ薬草採取に来ている。アロ様はどうしても抜けられない公務があるため欠席だ。アロ様は3年生になってから本格的に公務が増え、欠席することが増えた。


「リリー、こっちにマルマル草があります」

「マリア、気をつけてくださいね。昨日雨が降ったので、地面がぬかるんで滑りやすくなっていますわ」

「ありがとうございます。リリー」

久しぶりの外出に、少し浮かれていたようだ。3年生になり王妃教育も大詰めを迎えているので、放課後は王宮からあまり出られないのだ。最近ストレスが溜まっていた。

「……あっマリア、そこは!」

「え?あ……」

リリーの声に振り向こうとしたが、ズルリと滑る感覚とその先に少し大きな穴が見えた。えっこんなところに穴なんてあった⁈ふわりと浮遊感と共に体が下へ落ちる。

「マリアッ危ない!!」

シャルくんの声が聞こえたと思ったら、頭を抱きかかえられ、そのまま二人で落ちていく……これって死んじゃう??

ドンッ

強い衝撃に、一瞬目の前が暗くなった。

「マリア、マリア!大丈夫?」

「シャルくん、ここは?」

「ん~どこかの穴、洞窟のようだね」

「穴に……」

「結構落下したみたいだ。お互い加護がなかったら死んでいたかも……」

「でも、落ちてきたはずの場所に、明かりも見えないような気がするけど」

「なんか、閉じ込められたみたいだね」

「閉じ込められた??」

「幸いリリアーナ嬢も落ちたところを目撃しているし、そのうち助けが来ると思うんだけど……まさか、あの猫……」

「え、猫?」

「いや、なんでもない。とりあえず何処かに座ろうか。あまりここから動くのも得策ではないし、体力は温存しておこう」

そう言って、シャルくんは岩のところまで連れて行ってくれた。明かりはないのに、岩自体がぼんやりと発光しているようだ。とても幻想的な景色だ。

「岩に明かり苔が生えているみたいだね。暗くなくて助かった」

「あの魔法薬の材料の?」

「そうだよ。あとで採っていこうか」

「そうだね。せっかくだから、……くしゅんっ」

肌寒さにくしゃみが出た。そういえば、先ほど暑くて上着をぬいでしまっていた。ここは外よりかなり気温が低いようだ。

「これ、羽織っておいて」

シャルくんが自分の上着を肩にかけてくれた。

「でも、シャルくんが冷えてしまうよ」

「僕は大丈夫。君に丈夫にしてもらったから」

「ふふ、おまじないね。懐かしいな」

二人で岩に座って、あの頃の話をたくさんした。

「……」

急にシャルくんが黙り込んだ。何かを考えているようだ。

「どうしたの?シャルくん……」

「ねえ、マリア。僕と一緒にカーネル王国に来る気はないかい?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ