第77話 アナリス王女の旅立ち
そして、新年を迎えアナリス王女がユリゲーラ国へ向けて出発する日が来た。
私もアロ様と一緒に、アナ様に同行する。王女の侍女として仕えていたミリア義姉様も同行し、新学期が始まりあちらの生活に慣れるまで付き添うようだ。スティーブ兄様はかなり心配していたが、ミリア義姉様に頼まれて渋々了承していた。惚れた弱みである。
アロイス殿下は、陛下の名代としてユリゲーラ国へ挨拶も兼ねて同行する。私はただの付き添いだ。
「それでは皆様行ってまいりますわ。父上母上、アレク、体に気をつけて元気でいてくださいね。次の休みには戻ってまいりますから。あら、アレク。泣かないで」
「アナ姉様、必ず帰ってくださいね」
「ええ、勿論よ。次に会う時は、身長がぬかされているかもね」
12歳のアレク様は、成長期のようでぐんぐん身長が伸びている。実は私はすでにぬかされてしまった。牛乳を飲んでも大きくならなかったのだ。
「では、出発しよう。あまり遅くなると、予定している街に着くのが夜なるよ」
「はい、行ってまいります」
「ああ、行っておいで。マリアも気をつけるのだよ」
「はい、陛下。行ってまいります」
陛下も、私が隣国まで行くのは心配だと言っていたのだが、アロ様がララにペンダントのことを陛下にも教えていいか?と聞き、いいにゃ、と言われたため、陛下にも伝えたのだ。
無事、出発出来てよかった。
一台目の馬車には、アロ様、アナ様、ララと私が乗っている。2台目にはミリア義姉様の他2人の侍女が乗っていて、2人はそのまま付き添うのだという。ミリア義姉は居ても半年ほどだと聞いている。それ以上いたらスティーブが迎えに来てしまうわ。と笑っていた。
途中、グラン領にも寄ることになっている。隣国へ行く街道沿いにあるためだ。一日だけだが、両親に会えるので楽しみだ。グラン領まで5日、そこから、ユリゲーラ国の王都まで5日で到着する予定だ。雨などがあればもう少しかかるが、今回もララが同行しているのでそこは安心している。
そして5日目、晴天に恵まれて、グラン領へ入った。
「ようこそお越しくださいました。アロイス殿下アナリス殿下、順調な行程で安心いたしました。マリアもおかえり。まずは、屋敷へご案内いたします」
父と母が出迎えてくれた。元気そうでよかった。今回は、屋敷に一泊する予定だ。
一泊だけなので、少し残念だが、帰りにもう一度寄って帰る予定なので、その時に少しゆっくりするつもりだ。ミリア義姉様も結婚式以来なので、両親と挨拶をしていた。