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第75話 聖女ローラ

「マリア様、神殿までお越しいただきありがとうございます」

「ローラ様、聖女の活動はどうですか?なかなか学園で話す機会が無くて、こちらに来てしまいました。お忙しいのにすみません」

「いえ、こちらこそ、放課後すぐに神殿に来ているので、ゆっくりお話しできなくて申し訳ございません」

「ローラ嬢、もしジャコブ大神官殿がその様にしているのなら……」

「いえ、違います。私がその様にしたいと申し出たのです。決して、大神官様がそうしたらいいなど、申されていません」

「そうか、神殿のことで何かあれば、遠慮なく僕に言ってきて欲しい」

「ありがとうございます。殿下。あの、ひとつ気になることがあるのですが……」

「大神官殿の?」

「いえ、あの、ロ、ロイド様のことで……」

「え?ロイド??やつがどうした?」

「あ、あの、最近よくこちらに寄っていただいているのです。ロイド様は殿下の側近だと聞きました。もしかして、私はまだ疑われていたりするのでしょうか?」

「あの、ローラ様。殿下は疑ってなんかいないと思いますよ。逆に何故ロイド様はこちらに来られていると?」

「はい、気になるから様子を見に来ているとおっしゃられていました」

「ロイドが気になるからと?まさか、まだ魅了の影響があるのか?」

「いえ、もう私にはセカンドギフトはないと、大神官様が言っておられました」

「では、言葉通り、気になるということでは?」

「ロイドが、気になる?もしかして、あいつが何度も魅了にかかっていたのも、単に好きになっていたからか?あいつ以外は数回で耐性がついていたのに、ロイドは何度もかかっていたから、おかしいとは思っていたんだ」

「あ、あの、それは……」

 ローラ様は真っ赤になって俯いた。もしかして、ローラ様もロイド様を??

 

 その時、扉が開いてロイド様が部屋に入ってきた。

「で、殿下……なぜここに?」

「……その言葉、そっくりお前に返すが、何故ここに?確か、最近用事で忙しいからと執務室にも来ないと思ったら、これがそうか?」

「あ、あの、それは申し訳ございませんでした。俺、ローラ嬢のことが気になって、あんなことに巻き込まれて……」

「あの、ロイド様もしかして、覚えておいでなのですか?あの、魅了事件を」

「あ、はい。ちゃんと覚えています。ルルーシェ様にお前は覚えておけって言われました」

 それは、ロイド様がローラ様を好きだったから?

「え、ロイド様、覚えているのですか?私のしてしまったこと、魅了の件も……」

 ローラ様はショックを受けた顔をした。きっと以前のことにかなり罪悪感を覚えているのだ。それを、気になる相手に知られてしまっている。

「あの、その節はご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」

「いや、俺は気にしてないので。わざとではないですよね」

「で、でも、やってしまったことは事実ですし、やはり、申し訳なくて……」

「今、ローラ嬢は立派に、聖女として頑張っているではないですか。それで十分だと俺は思います」

「ありがとうございます。ロイド様」

 殿下は私を見た。私も殿下を見た。これは、もう二人きりにしておいた方がいいですね。そう、思った。

「ロイド、僕たちはそろそろ帰る。お前は残れ」

「え、あ、はい。お気をつけて」

「では、ローラ様。頑張り過ぎないようにしてくださいね。困ったことがあればいつでも相談に乗りますから」

 ええ、ロイド様のこととかも。

 思っていることが分かったのか、少し赤くなりながら、頷くローラ様は可愛かった。

 いいな、ドキドキキュンキュンだ。今後、二人のことは見守りたいと思う。


 神殿の廊下を歩いていると、向こうから見知った人物が現れた。ジャコブ大神官様だ。

「おお、これはこれは、王太子殿下とマリアローズ様ではありませんか。聖女ローラのところにお越しと聞き、急いでご挨拶に伺うところでした。丁度よかったですぞ。すれ違うところでしたなぁ、ふぉふぉ」

「ちっ、何が丁度だ……計算通りだろう」

 殿下が小声で毒づいているが、向こうには聞こえていないようだ。

「お久しぶりです。ジャコブ大神官様」

「マリアローズ様、お元気そうでなによりですな。女神の愛し子様には健やかにお過ごしいただきたい。それがひいては国のためになります。ですが、少し小耳にはさみましてな」

「何をでしょうか?」

「いやなに、来年の初めにアナリス殿下が、隣国に留学に行かれるときに、殿下とマリアローズ様が見送りも兼ねてご同行される、とか?」

「ほう、大神官殿は耳が早い。それが何か?」

「今申しました通り、マリアローズ様には国のため、健やかに国内でお過ごし願いたいのですよ。神殿と致しましても、そこは重要なところでしてな」


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