第71話 断罪の果てに
「マリア、僕のお嫁さんになってくれるかい?」
ダンスが終わった後、シャルくんが私を見つめてそう言った。会場中が私たちの動向を注視している。でも打ち合わせの時に、そんなセリフあったかしら?
そう考えている姿は、恥ずかしがって、戸惑っている様に見えたようだ。アロイス殿下が、ローラ様を連れて、私たちの前に立った。
「マリアローズ・グラン伯爵令嬢、貴様、私というものが在りながら隣国公子とその様な関係になっているのか?」
会場は、きっとそれは殿下もでは?と言いそうな雰囲気だ。まあ、仕方ない、無理やり断罪するのだ。ここは勢いでいくしかない。
「貴様のような女とは、婚姻できない。この婚約は解消させてもらう。そして、今ここで死ぬがいい」
そう言って、殿下は剣に触れた。みんなは固唾を飲んで見守っている。いや、そこは助けて欲しい。
その時、ローラ様から、違う声が聞こえた。
〈おお、いいぞ、殺してしまえ。どれ、われが力を貸してやろう〉
ローラ様からブワリッと黒いモヤが立ちのぼる。
『今にゃ!』
殿下は、隠し持っていた5柱の加護のペンダントをローラ様の首にかけた。
〈な、何を、ギャーーーッ〉
黒いモヤは、ローラ様の体から完全に弾き出された。そして、小さくなった。
〈また、力が弱まって……ああ、悔しい、また一人になるのか〉
黒いモヤは力なく漂っている。そこに白猫のララがやって来た。
『私がいるにゃ、私の中に来るのにゃ』
予想外の行動に、私は固まった。最後にどうするか?と聞いたとき、私に任せるにゃ。と言っていたが、まさかララの中に黒いモヤを入れるなんて……そんなことをしたら、ララは黒いモヤに操られたりしないの???
「ララ、そんな……」
『大丈夫にゃ。任せるのにゃ』
〈われを迎え入れるだと⁈どこまでも暢気なことだ、のっとってやるわ〉
そう言って黒いモヤは、ララの中に入っていった。ララは少しの間動かなかったが、ふう~と息を吐いて笑って言った。
『なんとかなったにゃ。黒いモヤは同化したにゃ』
白猫ララを見ると、しっぽの先だけが黒く染まっていた。
その時、殿下の焦った声が会場に響いた。