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第70話 舞踏会で断罪されましょう

「は?今度の舞踏会でローラ嬢をパートナーに……」

 アロイス殿下が不満の声を上げる。今は暗示が解けているので、いつもの殿下だ。

『そうにゃ、このままほのぼのお花畑では、黒いモヤは出てこないにゃ』

「そこで、アロイスにはその舞踏会でローラをエスコートし、みんなの前でマリアを断罪してもらおうと、」

「断罪⁈ 何を言っているんだ、そんなことしたらマリアが……」

「私は大丈夫です。それで黒いモヤと決着がつくのなら。私、アロ様のこと信じています」

「後処理は、自分にまかせておけ。その舞踏会に来た人間には違う記憶を見せておく。神の責任は神がとるべきだからな」

「神の責任をルルーシェ様が?」

『……ややこしいから、気にしにゃいで欲しいのにゃ』

「マリアのエスコートは僕にまかせて」

「~~。ハリス公子、僕のマリアをよろしく頼む」

「ああ、任せて。こんなこと早く終わらせて、マリアを安心させてあげて」

『じゃあ、決まりにゃ。これから作戦会議にゃ』



 今夜、いよいよ黒いモヤに対峙する。

 私の装いは、蜂蜜色のドレスだ。

「せっかく僕がエスコートするんだから、僕の色をまとってよ。お願い」

 そういって、シャルくんが送ってくれたのだ。ずっと協力してくれているシャルくんのお願いを断ることは出来なかった。

廊下で殿下とすれ違った。今から、ローラ様を迎えに行くようだ。

「マリア、その色もよく似合うね。素敵だよ」

 少し切なく笑うアロ様に、嫌な予感がする。いつものアロ様なら、シャルくんの色をまとうなんてと拗ねそうなのに、褒めるなんて。それじゃあまるで、シャルくんに私を渡してもいいみたいに聞こえる。

「アロ様、……もしも私を殺してしまいそうな場面がきても、絶対に先に死のうとしないでください。 そんなことをしてもらっても、アロ様が死んでしまったら、私は後を追うと思います」

「……マリア、僕の考えを読まないで欲しいな。そんなことを言われたら、いざって時に躊躇ってしまうよ」

「駄目です。私はアロ様を失うなんて考えられません。一緒に生きると誓ってください。お願いですから、私を一人にしないでください」

「ああ、僕のマリア、君を一人には決してしない。守ってみせるから」

 そう言って、いつもより少しだけ長いキスをした。


「じゃあ、暗示をかけるけど、途中で解くから打ち合わせ通りに。この作戦はアロイスにかかっているから、頼んだよ」

 そう言って、ルルーシェ様は殿下に暗示をかけた。

 殿下は、ローラ様をエスコートして王宮主催の舞踏会に参加するのだ。

学園での殿下の行動が、貴族の間でも噂になっている。マリアローズ様とは破局したのでは?などの憶測が飛び交っているのだ。断罪される理由はないが、無理やり断罪にもっていく予定だ。

 ローラ様の奥深くに黒いモヤはいるようで、このままではどうしようもないらしい。今回断罪し、殿下が精神的に弱るのを狙っている黒いモヤが、弱った殿下に憑依しようとした瞬間を狙って策を講じる予定だ。


「マリア、ごきげんよう。今夜はハリス公子がパートナーなのですか?」

「リリー、チャールズ様。ごきげんよう。そうですわ。殿下のことはもういいのです」

 言っていて悲しくなるが、仕方ない。今夜、私はシャルくんと恋人の様に振舞うのが断罪作戦に必要になってくるのだ。シャルくんもノリノリで私の腰を抱き込んだ。

「やっと僕の気持ちに気づいて応じてくれたんだ。マリアと恋人同士になれて嬉しいよ」

 リリーは驚きすぎて声が出ない。チャールズ様も目を見開いている。最近の殿下の態度はどうなのか?と二人は殿下にも苦言を呈していただけに、この事態は想定外なのだろう。

「……マリア、本当にいいのですか?私はどんなことになっても、あなたの味方ですわ。ですから、後悔のないようにして下さいね」

「ありがとうございますリリー。あなたが味方になってくれるなんて、嬉しいです」

 転生前は、味方なんて誰もいなかった。さらにリリアーナは私を断罪する側だったのだ。今世で私がやって来たことは、ちゃんと私に心強い味方をくれた。

「マリア、僕と踊ってくれるかい?」

 手の甲にキスを落としながら、シャルくんが私をダンスに誘う。周りの令嬢から黄色い悲鳴がもれる。さすが、見事な王子様スマイルだ。

「ええ、喜んで」

 ふんわりと微笑んで二人でフロアへ出ていく。

 殿下は、ローラ様とフロアの中心ですでに注目を集めながら踊っている。

「マリア、楽しんで。僕は今すごく幸せだよ」

 シャルくんは、まるで愛しい人を見るように微笑んでから、くるりとターンを決めた。さすが公子様、ダンスも見事なものだ。ここで親密さをアピールすることが、あとの断罪に真実味を持たせるのだ。私たちは禁断の恋に身を焦がす恋人同士という設定なのだ。


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