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第69話 アロイス殿下が誘惑されました

「マリア、あれはどういうことですの⁈」

「……」

 アロイス殿下がローラ様と腕を組んで歩いている。わかっていても心はズキズキと痛みだす。そう、アロイス殿下はローラ様に絶賛誘惑され中だ。

「リリー、辛いので違う場所へ行ってもいいでしょうか……」

「そ、そうですわね。マリアというものがありながら、こんな仕打ち、許せませんわ!!」

「……」

 詳しく話せない私は、ひたすら下を見ていた。その姿がショックを受けてうなだれている様に見えるのか、周りの令嬢からも非難の声が上がる。でも、本当は違うのだ。

 

ララと魅了について話していると、ルルーシェ様がやって来た。最近は、いろいろと相談に乗ってくれていて、今日も顔を出してくれたのだ。

「なるほど、セカンドギフトに魅了か。あり得るな。それでどうするつもりだ?このままだと、アロイスも魅了に抗えないかもしれないぞ」

『そこで、ルールにお願いするにゃ。アロイスをルールのお気に入りにして欲しいのにゃ』

「自分……でなく、ルールにか?」

『そうにゃ、ハリス公子がいい例にゃ~。ラーラ以外の加護なら魅了は効かないのにゃ。そして、ルールが加護をした上で5柱の加護のペンダントを外すのにゃ』

「なるほど、ラーラの影響を排除するのか」 

『でもこのことは、内緒にゃ。アロイス、マリア、ハリス公子、私とルルーシェだけが知っていて、アロイスには魅了にかかったふりをしてもらうのにゃ』

「そんなにうまくいくのか?」

『元が私にゃ。ある程度引っかかると思うのにゃ。力が戻って過信している今がチャンスなのにゃ』


「は?魅了にかかったふり?僕がマリア以外に心を許す⁈そんなの演技でも無理だ!」

その後、シャルくんと殿下を加えて作戦会議が開かれていた。

「ああ、そうだろうな。だから自分が暗示をかけてやろう」

「暗示?それは大丈夫なのですか?」

「ああ、意識はちゃんとあるぞ。ただ、魅了されたように動くんだ、体がな」

「え、なにそれ、面白いね~」

「うるさいぞ、ハリス公子。他人事だと思って」

『兎に角、ローラから黒いモヤを引き離すことが重要にゃ。そのためには油断させてアロイスにとどめを刺そうと出てこさせるのが、一番早いと思うのにゃ』

「操られて、油断させてとどめを刺しに……殿下は安全ですか?」

『だから、ルールのお気に入りにしてもらって、加護をもらうのにゃ』

「まあ、愛し子でなくても、加護はつけられるんだ。大丈夫だろう」

「だが、マリアを裏切るような行為は……」

『このままズルズルと黒いモヤの思い通りにいくのを見ているのにゃ?またいつ、マリアに手を出してくるか分からないのにゃ』

「く、あんな思いは二度とごめんだ」

きっと、私が刺されてしまったことだろう。あれも、黒いモヤが庭師を操っていた。今度は、もしかしたら……

『黒いモヤは、今度はアロイスを操って、マリアを直接殺させるつもりにゃ』

「は?僕にマリアを殺させる……そんなことをしたら僕は自分を許せない、きっとまた自ら命を絶つぞ」

『それが狙いにゃ。黒く染まったアロイスの魂が欲しいのにゃ』

「それは、すごく悪趣味だね~。どうしたらそんなに恨みを買うの?」

ああ、シャルくん。また、あなたはハッキリと……

『アロイスのせいじゃないのにゃ。それより前にあったことが、まわり回って今の状態になったのにゃ。すべての責任はラーラにゃ』

「それで、アロイスはどうする?このままではララの言ったとおりになるぞ」

「うっ。わかった……」

「そうか、では暗示をかけよう。みなも協力を頼む」

「ねえ、ところでさ、なんで白猫がしゃべっているの?」

『……にゃあ』

「まあ、いいか。僕も協力は惜しまないよ。殿下がダメになったら、僕がマリアを助けるから、いいよね」

「そんなことには、絶対ならない。黒いモヤはきっちり仕留めてやる」

 

そんなことがあって、今である。

殿下は、ローラ様に尽くす王子様になっている。幸いなことに、ずっと療養していたローラ様は純粋培養のお嬢様で、恋人イコール手をつなぐ。おしゃべりをする。と、なんともほのぼのとした雰囲気で、見ている私の心も最小限のダメージにとどまっている。


「マリア、大丈夫かい?何とも可愛らしいお姫様だね。手をつないで歩いているだけで本当に幸せそうだね。でも、これで黒いのが満足するのかな?」

「シャルくん、聞こえたら困るから、しーっ」

「あはは、ここにも可愛いお姫様がいるよ。殿下がぼんやりしている間に……嘘だよ」

「もう、今度揶揄ったら、絶交するからね」


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