第66話 何がしたいのか分かりません
放課後、殿下は公務のため先に王宮へ戻ったため、リリーとカフェでお茶をすることにした。学園は緊張感がありすぎて疲れたのだ。少しだけホッとしたかった。
「う~ん、難しいですわ。ローラ様が何か悪いことをしていたら、こちらも動きようがありますのに。何かするのは周りばかりですもの」
リリーが紅茶を飲みながら、ため息をついた。そうなのだ、ローラ様自体はとてもいい子で、神殿にも通って聖女としての勉強も熱心にしているという。
「そうですね。ローラ様に惹かれた男性が勝手に迫ってきて、婚約者や恋人が騒ぎを起こしているだけですね。そのたびにシャルくんや殿下が仲裁に……」
「そうですわ、それだけでは退学には出来ませんし、どちらかと言えば、彼女が被害者なのですわ。わかってはいるのです。でも、なぜかすっきりしないのです」
「そうですね、何故彼女に男性が惹かれるのか……。可愛いからだけでは説明がつかないほど多いですし、原因がはっきりしていないので対策が取れないのです」
「殿下の側近のロイド様はどうなのですか?学園に来られていませんが……」
「ロイド様は最近正気に戻られました。どうやら、一定期間近づかないようにすれば、戻るようです。でも、近づけばまた好きになってしまうようで、根本的な解決策がないのです」
「それはまた難儀なことですわ。まるで禁術の魅了のようですわね」
「……禁術の魅了……」
そのワードは知っている。聖薔薇のロイドルートに出てくる悪役令嬢が、マリアローズを追い詰めるために禁術に手を出すのだ。確かそれが魅了だったはず……誰にでも使えるものではなく、確かその悪役令嬢はギフトで癒しをもっていて……隠れたセカンドギフトとして、魅了を持っていたのだ。
「まさか、魅了を?みんなに?」
「そうですね、皆さんに使う必要はないですわ。私なら意中の相手だけに使いますわ」
そうだ、ロイドルートでも、魅了を使われたのはロイド様だけだった。どうやって魅了を解呪したのかしら?アロイスルートばかりしていたから覚えてないわ。
「念のため、魅了について調べてみますわ。なにか解決策があるかもしれませんし」
「そうですね、私も、殿下とルルーシェ様に相談してみます」
早速帰ってから、まずはララに相談した。
『そうにゃ、魅了があったのにゃ。希少すぎて忘れていたにゃ』
「やっぱり魅了なのかしら?それって禁術なのでしょう?わざわざみんなにかけて疑われる危険を増やすかしら?私なら狙っている人だけに使うわ」
『普通はそうにゃ、でももし本人が無意識に魅了を使っていたらどうにゃ?』
「無意識に……?」