第65話 ドキドキイベントが発生したようです
ローラ様は、よく私に会いに来た。
「神殿のことで相談があるのです。マリア様」
アロイス殿下が一緒の時を狙っているのか、いつも殿下といる時にやって来る。殿下は出来るだけローラ様を視界に入れないよう、努力しているようだった。それでも、視線が合う時はある。その時はシャルくんやリリーが必死でガードするのだ。ちなみにロイド様は戦力外だ。速攻でローラ様に落ちた。今は、訓練強化の名目で、学園には登校禁止にしている。そうしないと、殿下とローラ様をくっつけようと、いろいろお膳立てに奔走したのだ。好きな子に尽くしたいタイプが裏目に出た形である。
「あの、アロイス殿下」
「すまない、君に名前を呼ぶ許可は出していない。……可愛……ごほん」
「あっローラ様、あちらでゆっくり話しましょう。殿下は先に戻ってください!!」
「ああ、そうするよ。ではな」
そうやって、何度も何度も出会いを繰り返した。まるでイベントだ。……そう、乙女ゲームで好感度を上げる方法だ。何気ない出会いを何度も繰り返すと、攻略対象者が好意を示してくれる……でも、ローラ様は聖薔薇には出てきていないはず。まさか、ここでもストーリーが変更に?
そんな時、事件は起こった。教師に頼まれた資料を取りに殿下が資料室へ行くと、そこにローラ様がいたようだ。慌てて資料室を出ようとしたらカギが壊れていて閉じ込められたらしい。
帰ってくるのが遅いと、シャルくんと私が資料室へ行くと鍵が開かない。無理やり扉をシャルくんが蹴って開けると、そこには抱きしめ合っている殿下とローラ様がいたのだ。
「アロ様……」
「……!マリア、これは違う、僕が愛しているのは……愛しているのは……」
「おい、しっかりしろ!!正気に戻れ。このままだと、マリアは僕がもらうよ」
シャルくんの言葉に、正気に戻った殿下は、私を抱きしめた。
「僕のマリア、君だけが僕のすべて。愛しているのは君だけだ」
ローラ様は傷ついた顔をして、その場から走り去った。それでも不安は消えない。
これは、資料室に閉じ込められて、愛を育むドキドキイベントだ。まさか、ローラ様が聖薔薇のヒロインになって、アロイス殿下を攻略するの??
私はまた断罪されるの?