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第63話 アロイス殿下が誘惑されています

「殿下」

「お待たせ、僕のマリア。教室に行こうか」

「……はい、行きましょう……」

 男性が、ローラ様に謝罪をし、婚約者の女性とその場を離れた。これで、とりあえず場の雰囲気は収まった。ローラ様は殿下にお礼を告げて、自分の教室に向かった。

 そう、さっき見た光景は女性を救った、それだけなのに。ドキドキと胸は嫌な鼓動を響かせる。なんだろう、嫌な感じだ。

「アロイス殿下、あのローラ様は、あの……」

「ああ、突然告白されて驚いたようだ。気の毒だね。あれだけ可愛いと……」

「殿下……」

「あれ、僕、変なこと言っているな……マリア以外に可愛いものなんてないはずなのに」

「あの、殿下?大丈夫ですか?」

「なんだろう。ローラ嬢に近づくと……とても魅力的に感じるみたいだ。守りたくなる」

「アロ様……」

「違うよ、違うんだ!泣かないで、マリア。僕の愛しているのは君だけだ。本当だ」

 そう言って、抱きしめられた。温かい体温に少しだけ緊張が緩んだ。

「でも、これはおかしいな。なにか幻術でも使っているのか?」

 幻術……黒いモヤ……?

「急ぎ、ルルーシェ様に相談した方がいいと思います。このままでは、アロ様が……」

「そうしよう。でも本当に信じて、僕が好きなのも、愛しているのもマリアだけだよ」

「はい、信じています。私もアロ様を愛しています」

「とりあえず、授業が終わるまで、ローラ嬢に近づかないように気を付けよう」

 

「マリア、大変ですわ。今度は3年生の伯爵令息がローラ様に告白したようです。その方には恋人がいらして、その方は1年生の同じクラスだったようで、今、教室が大変なことになっているようです。殿下に仲裁をと声が上がっているようです」

「僕が行くのは避けたい」

「僕が行こうか?マリアが不安そうな顔をしている。殿下を行かせたくないって顔に書いてあるよ」

「シャルくん、え、顔に?」

「多分なんだけど、僕なら彼女に惹かれないと思うんだ」


「ありがとう、シャルくん。無事収まってよかった。でも、どうして大丈夫だと?」

「ああ、実は僕、神のお気に入りなんだ」


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