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第60話 黒薔薇は枯れていました

「え、黒薔薇が枯れていた?」

 殿下は部屋を出て、すぐに衛兵に黒薔薇の捜索を指示したそうだ。不思議なことに、今まで発見されなかった黒薔薇は、王宮の端の庭ですぐに発見された。ただ、庭の奥に咲いていた黒薔薇はすべて枯れていたそうだ。ほかの薔薇は瑞々しく咲き乱れているのにその一角だけがすべて枯れていた。黒い花びらがかろうじて見て取れる状態だったため、ここに黒薔薇があったとわかったらしい。王宮魔術師がその一帯に結界魔方陣を施して様子を見ることになったらしい。

 

「陛下もこのことを重く受け止めておられた。経緯を尋ねられたが、僕もまだ詳しく聞いていないので、待っていただいている。マリア、僕には理由を言えないことかい?」

 殿下は、ララをチラリと見て尋ねた。私もララを見た。

『アロイスも当事者になっているのにゃ。聞く権利はあるにゃ。それに手がかりがなくなったにゃ。これからはさらに気を付けないとダメにゃ~。だから、教えるのにゃ』

「僕が当事者?」

『少し前に、悪夢を見ていたのを覚えているかにゃ?マリアが死んでしまう夢にゃ』

「は?もしかしてこのペンダントを着ける前の悪夢か?」

『そうにゃ、あれは現実にゃ。実際にアロイスはマリアを断罪したにゃ』

「え、マリアを断罪……でも、今生きているじゃないか。それにあれは、もっと先の話では……」

「アロ様、覚えているのですか?」

「な、マリア、本当に僕は君を断罪したのか?そして死に追いやった⁈マリアもそれを知っている?どういうことだ」

『マリアが死んで、アロイスも死んだのだったかにゃ?そこから10年、時を巻き戻したのにゃ。マリアは転生前の記憶を持ったまま、時を巻き戻したにゃ。アロイスは、悪夢という形で一時期見ていたにゃん。これは予想外のことにゃ』

「アロ様が死んだ?なぜ?」

『……自殺したのにゃ。正気に戻った瞬間に、絶望したのにゃ』

 ああ、それは黒いモヤが狙っていた通りの結末だ。殿下まで亡くなってしまっていたなんて。フルフルと震えが上がってきた。

「マリア、すまない。僕は君を守るどころか、死に追いやるなんて……」

「アロ様のせいではないのです。黒いモヤがそうさせていたのです。私はアロ様が死んでしまっていたことを知らなくて……死なせてしまった、それが辛くて」

 しばらくの間、二人で抱きしめあった。お互いの体温を感じたかった。今、生きていると。

 白猫も少しの間、見ないフリをしていてくれた。


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