第59話 お姫様は目覚める
起きなきゃ、今すぐに!!
気持ちは焦っているが、身体は全く動かせない。声は聞こえているのに、どうして⁈
「マリア、目を覚ましてくれ。頼む」
唇に殿下の温かい体温が広がる……その温かさが、身体全体を包み込むような感覚を覚え、瞼が震えた。そして、ゆっくりと瞼を開けた。
「マリア?マリア!僕が分かるかい」
「アロ様……」
『はぁ~よかったにゃ~。このまま100年眠るのかと思ったにゃん』
「マリア、気分はどうだい?どこか痛いところとか、苦しいところは?」
「大丈夫です。でも……」
「泣いているのかい?マリア」
心が痛かった。きっと今まで、黒いモヤに同調していたためだ。酷い事をされたのに、少し半神のラーラに同情していた。憎しみに染まってしまった彼女を救うことは出来ないのだろうか……。
『もしかして、何か見たにゃん?』
「ええ、見たわ。ララ、あなたのやらかしたこと全部……」
『……嫌いになったにゃ?もう私のこと、嫌いにゃ?』
私は頭を振った。嫌いにはなれないよ。
「反省はして欲しいと思ったよ。でも、私が、あなた達のことを理解するのは難しい」
『……そうかにゃ、ごめんにゃ。それで、ほかに何か見えたにゃ?』
「……王宮の端にある庭に、黒い薔薇が咲いていたわ。それが、黒いモヤに力を与えていた。今も、虎視眈々と私たちを狙っているみたい」
「黒い薔薇?あの、建国神話の?」
「はい、アロ様。私が10歳の時に襲われたのも、その薔薇が原因でした。庭師は操られていただけでした。その薔薇を探してください。でも、見つけても決して近づかないで下さい。呪われるかもしれないので」
「わかった、すぐに衛兵に探させよう。近くに寄るなとも話しておこう」
「ありがとうございます」
「マリアは、医師の診断を受けてくれ。長い間眠っていたんだ。ちゃんと診てもらって」
そういって、部屋を出て行った。
「ねぇ、ララ。私が見たことを聞いてくれる?」
『勿論にゃ、ちゃんと聞きたいにゃ。黒いモヤのことも気になるのにゃ』
「じゃあ、全部話すから、ちゃんと反省して、それから対策を練ろう」
『わかったにゃ』