第5話 女神様の提案に乗りましょう
「実は、私がリリアーナを愛し子としただけでは、ここまで運命の糸がややこしく絡むことも無かったしぃ、流石にマリアローズが断罪されて、更に崖落ち死亡エンドなんてなるはずなかったの~」
崖落ち死亡エンド……女神様の言葉。もしかして女神様も転生者!?まさか創世の神々が転生しないだろう。まさかね。
「確信がないから、わかったら報告するけど少し時間を頂戴~。取りあえず、今言えることだけ提案するけど。マリアローズにもう一度転生して欲しいの~」
「…は?」
淑女にあるまじき声が漏れた。もう一度転生?どこに?まさか違うルートを?
「あ、いや言い方変えるね~。10年前に転生して欲しいの~。さすがに生まれる時に時間を戻すと運命が変わる人間が多数出てくるみたいでぇ4柱の神にも反対されたのよねぇ」
今4柱とサラッと言ったのか?やはりこの世界には5柱の神々が存在するようだ。転生というよりタイムリープ?いやこっちの体が死亡しているならやはり転生なのか?ただ私に転生しないという選択肢はなかった。だって死亡エンドだし。だからすぐに頷いた。
そうこれは一度だけ使えるコンティニューボタンだと思うことにする。
ただ、転生したからといってうまくいくのか?と不安になった。なにせ何が悪くてこうなったのかが全く見当がつかないからだ。戻ってみたが同じ結果なら、私は今度こそ崖から落ちて死亡してしまうはずだ。かなり痛そうだ。体がプルリと震えた。無意識に腕をさすっていると女神様が手を握ってくれた。
「もちろん不安に思うだろうし、絶対に大丈夫とは言えないけど~。私が責任を持って助けるから~、ちゃんと本来のルートに戻してみせるから!!一緒に頑張ってもらえないかしら~」
私はもう一度頷いた。確かに不安はある。でも、今詰んでいるのだから戻るしかない。これはチャンスなのだ。優しく暖かい家族を泣かせたくないし、このまま死亡なんて納得できない。
「とりあえず頑張ってあがいてみます。そしてみんなが幸せになれる方法を考えてみます。でもどうやって助けてくれるのですか?」
それはね、と可愛くウインクした女神様はくるりとその場で一回転した。
そこには金色の目をした毛足の長い真っ白な猫がいた。
恐れ多いと思いながらも、もふもふな毛並みの誘惑にあらがえなかった、暫くの間無言で撫ぜ回してしまったのは許してほしい、最近嫌なことが多すぎて心が勝手に癒しを求めてしまったのだ。少し疲れた様子の猫は、のび~と前足を伸ばした。
「この姿でマリアローズの周りにいるわ~。困った時や助けがいる時すぐ動けるしね。さあ、ちょっと急がないと時空が不安定なの。心の準備はいいかしら~?」