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第56話 side王太子アロイス 困惑

 昼過ぎに、ホワイト伯爵領の果樹園を視察するため、騎乗で現地に向かっていた。マリアも一緒に連れてくる予定だったが、体調が優れないということで置いてきた。心配なので早めに視察を終えようと馬に騎乗して行くことにしたのだ。

 マリアがいるホワイト伯爵邸の方を振り返ってみると、ちょうど湖がある辺りに雨雲が広がっている。あそこだけに雨雲?

 嫌な予感と共に白猫の顔が思い浮かんだ。まさか、あいつの仕業か⁈

「チャールズ、悪いが果樹園視察をやめて戻る!先方へ詫びておいてくれ」

「え、殿下、どうされましたか?」

「嫌なことが起こっている予感がする。ロイドは僕と一緒について来い」

 馬の鼻先をもと来た道へ戻すと、一気に駆け戻る。


 そして、湖の畔に3つの影を見つけた。白猫のララ、魔術師ルルーシェ・ブラック??、そして地面に寝かされたマリア⁈

 僕は慌てて馬から飛び降り、ロイドに手綱を渡して駆け寄った。

「どういうことだ!!マリア、マリア?」

 マリアは冷たくなっていた。呼吸をしていない⁈ まさか……死……

「あ、あああああ……」

 体が震えた、自分の中の魔力が抑えきれないほど大きく膨れ上がった。まずい暴走する。

「おい小僧、ここを吹っ飛ばすつもりか?マリアローズが死ぬぞ」

 ルルーシェが片手を上げて、僕の魔力を一瞬で吸い取った。は?こいつ何者だ??

「まあ、気持ちはわかるが落ち着け。マリアローズは死んでいない」

「死んでいない……でもこんなに冷たくて、息もしていない」

「ああ、仮死状態にした。黒いモヤに悪意はなかった。だから、加護のペンダントが反応しなかった。そのうち目が覚めるだろう。で、あっても、いつ目覚めるか分からない。体力が無くなれば、目覚める前に死んでしまうだろ。だから一時的に仮死にした。目が覚める段階で生き返るようにしている」

「は?そんな魔法聞いたことがない……黒いモヤが?」

「まあ、自分は天才魔術師だからな」

『にゃ⁈自分で天才とか、恥ずかしいにゃ』

「うるさいばか猫。元はと言えばお前が、自分がした忠告を適当に聞きやがって、それでこの様だぞ。自分は湖には近づくなと言ったんだ。加護のペンダントから違和感がしたから慌てて来てみれば。お前は何回やらかすんだ!」

『ごめんにゃ、黒いモヤは私を狙うと思ったにゃ~。まさかマリアに行くなんて思ってなかったのにゃ~反省はあとでたっぷりするのにゃ~』

「ところで、ララ。お前その騎士の前で思いっきりしゃべっているがいいのか?」

『……にゃあ』

「あ、俺気づいていました。大丈夫です。そういう生き物だと思っているので」

『そうかにゃ、じゃあいいにゃ』

「……それで、これはどういうことか聞く権利はあるよな?」

 マリアが無事だと聞いて、少し冷静さを取り戻すことが出来た。彼女を失うことはない。心が冷え切ることはない。

「この湖に現れていたのは、残留思念だった。無害だが、マリアローズを覆って自分の無念を果たしたようだ。意識を引っ張られて深い眠りについた状態だ。昔100年眠った姫がいたらしいが、マリアローズは…女神がついているから長くても10日くらいだろう」

「……10日も」

「ああ、それで仮死状態にした。これならば、体力は奪われない。だが、だれが見ても死んでいると思うからな。どうするかそこは考えてくれ」

「ルルーシェ・ブラック、いろいろ聞きたいことはあるが、まずは礼を言う。ありがとう」

「いや、自分はこいつと腐れ縁でな。こいつのやらかしたことは、自分の責任でもあると思っている。こちらこそ、マリアローズをこんな目に合わせてしまって悪かった」

「ルルーシェ、君なら僕とマリアを王宮に今すぐ戻すことは可能か?」

「ああ、できるよ。そこのばか猫もいっしょにな」

「そうか、ではマリアの寝室に戻してくれ。ロイド、すまないがホワイト伯爵へ伝言を。リリアーナ嬢にも適当な理由を言っておいてくれ。先に戻っているから、あとから追って来てくれ、まかせたぞ」

「はい、かしこまりました。お気をつけて殿下」

 僕はマリアを抱き上げると、ルルーシェに合図を送った。慌てて白猫が僕の肩に乗った。

 白い光に包まれ目をつぶった。次に目を開けるとそこはマリアの寝室だった。

「あいつ、何者だ……」


 マリアをそっとベッドに寝かした。不安が胸に広がるが思考を遮った。

「ララ。マリアを看ていてくれ。僕は、陛下に報告してくる。10日間マリアを隠す必要がある、頼んだぞ」

『わかったにゃ。アロイスもごめんにゃ。精一杯回復させるにゃ』

「色々と聞きたいことはあるが、あとだ」

 突然、僕が戻って来たことに驚いた陛下だったが、マリアの現状を知り、マリアの部屋の周りを立ち入り禁止にしてくれた。


 早く目を覚ましてくれ。君のいない世界なんて耐えられないんだ。


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