第52話 聖女になってしまいました
「ああ、アン大丈夫かい?」
「あれ、サム先生だ。こんにちは~なんでここにいるの?」
「すごい、奇跡だ。完全に治っているぞ。何者なんだ」
周りがざわざわ騒ぎ出した。これはやってしまったかも……
アロイス殿下が私を後ろに隠してくれた。あまり大事になるのは困る。
「まあまあ、アンも治ったようだし、みんなも解散して仕事に戻ってくれ」
「アンもお母さんと帰って大丈夫だよ。このお姉さんが治してくれたんだよ」
「お姉さん、治してくれてありがとう」
手を振ってくれる女の子を見送りながら、ちゃんと治ってよかったと思った。
「アロ様、ごめんなさい。勝手に動いてしまって」
「いや、マリアは自分が正しいと思うことをしただけだ。それに、マリアじゃないとあの子は助かってないよ」
「やはり、あなたは女神の愛し子様でしたか。マリアローズ様」
「え、サム先生。なんで……」
「あ、そうか、サム先生オーラの色が分かるんだった。しまった」
「はっはっ、殿下でもうっかりされるんですな」
「え、殿下……」
「ああ、サム先生はもともと王宮の医務室や学園の医務室にいたんだよ。だから面識があるんだ。あと、前にマリアが飲んだ苦い薬草茶あっただろう、あれも先生のレシピだよ」
「え、あの激苦薬草茶…あ、すいません」
「はは、まだあれが出されているんですな。確かに効くんですが苦くて飲むのに苦労するそうで」
「そうですね…」
「それと、私が王宮の医務室にいる時に、幼いマリアローズ様を何度かお見掛けしておりました。大きくなられて、はじめは気づきませんでしたよ。オーラを見て確信しましたが」
「一応、内密でお願いするよ」
「殿下、それは無理では?これだけ騒がれては、無かったことには…」
「そうだな、女神の愛し子はまずいんだ。広まってしまったら気軽に外を歩けなくなる」
「では、治癒魔法師の最上級、聖女でいかがでしょう。似て非なるものではありますが、住民の皆には分からないと思います」
「ああ、それいいな。聖女マリアでいこう」
どこかで似たような名前を聞いたような、聞かなかったような、ま、いっか。
それから、時々聖女マリアが街の診療所に現れる。と噂になった。