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第4話 女神様のプレゼン

 マリアローズが生まれたグラン領は、王都から少し離れた長閑な領地だった。人より羊や牛のほうが多いと言われ、羊毛産業と酪農を生業にした領民たちと支えあって慎ましく暮らすような平和な所だった。

 その暮らしが一変したのは、グラン伯爵家の二人目の子供として生を受けたマリアローズがギフト判定で女神の愛し子と判定されたからだ。折しも王宮では第一王子が生誕し、国中が祝賀行事にわいていたのだ。今思えばタイミング的にも悪かった。

 気がつけばマリアローズは、将来立太子される第一王子アロイス殿下の婚約者と定められてしまった。直ぐに王宮で育てると使者を送りつけてきた王族に対して、両親はせめて5歳までは領地で育てさせて欲しいと嘆願してくれた。少し気の弱い父と、優しい母が、恐れながらも王族の申し入れを退けてくれたことは本当に感謝しかない。

 マリアローズは、5歳まで家族や領民の愛情を惜しみなく与えられて自然豊かな領地で幸せに暮らしていた。そして、6歳で王宮に連れてこられてからは、王妃教育が始まり厳しさに毎日泣いた。本当に地獄だと思った。

 それでも5歳までの幸せな記憶が私の支えになってくれていたし、家族もまだ小さい娘を一人で王宮に住まわせるならせめて近くにいようとタウンハウスのある王都に住んでくれていた。王宮にも出向き疲れた私を励ましてくれたのだ。

 そんな家族や領民までも巻き込んで、ごめんで済ませられるほど私はお気楽にはできていない。だからこのタイミングで女神様が現れたのが単に謝罪だけでないことを期待した。どの様に転んでも今より悪くなることはないと信じて。

 女神様は申し訳なさそうにしていたが、決心がついたのかパッと顔を上げた。そして空間に手をかざした。

「実は~提案があります」

 これは所謂プレゼンテーションなのだろうか?空間に様々な映像が映し出されていた。

 そこには現在の両親の姿もあった。二人とも涙を流し娘の無実を訴えているようだ。もし、今崖から落ちて娘が死んだのだと知らされたら、この優しい人たちがどうなるのかと考えると胸が締め付けられた。死ねない。

 それとアロイスとリリアーナの映像。二人は仲よさげに寄り添っていた。ズキッと胸が痛んだ。ただ少し違和感のようなものがある。二人共表情が無いのだ。まるで操り人形のようだ。女神様も気づいている様子なので同意を求めて目を見つめると

「ああ、気づいちゃった?気づくよね~」

 ただ断罪直後の私ならたぶん気づいてないと思った。あの時の私は思考にモヤがかかったような感じで、断罪されている状況も実感がわいてなかったのだ。婚約破棄などと言われ、さらにグラン領は王家の直轄にすると宣告され、生まれ育った領地が無くなると知ったというのに何も思わなかった、いや思うこともなかった。これはかなり変だ。


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