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第44話 グラン領の視察に同行します

 グラン領には、1週間滞在する予定だ。兄の結婚式は4日後で、今日と明日は、グラン領の視察が入っている。今日は父が案内をするようだ。もちろん私も護衛も同行する。


「今は夏なので、夏草がたくさんはえているので基本は放牧しています。牛と羊が領民より多いのです。乳製品が特産品で、特にチーズは種類も豊富で美味しいのです!」

 何故か同行した父ではなく私が説明をしている。父は満足して頷いている。

「すごいなマリア、うちの領のことをちゃんと勉強してくれていて嬉しいよ。でも、これは知っているかい?」

 そういって、クリーム色の塊が乗った小さな器を差し出した。これって、アイスクリーム? まだ、この世界でアイスクリームを見ていなかった。夏の暑い日に食べたいな~と思っていたのだ。器を受け取り、一口食べた。

「ん~~~~。冷たくて美味しい~」

「まだ試作段階なのですが、冷凍技術を高めて、将来は特産品として販路を広げたいと思っているのです」

 毒見も兼ねて一口食べた私は、殿下へ器を渡そうとしたが、殿下はにっこり笑ってア~ンをした。最近の殿下のお気に入りの行為だ……。どこから聞いてきたのか、仲のいい恋人同士はお互いに食べさせあう、と言い出したのだ。きっと、シャルくんあたりがふざけて殿下に教えたのだろう。まさに悪魔の囁きだ。


 このままでは埒が明かないので、一口すくったアイスクリームを殿下の口に運ぶ。父はサッと視線を下げて見るのを避けてくれた。父親に見られるとか、恥ずかしいので助かった。

「ああ、本当だ。冷たくて美味しいね。牛乳の味がするよ」

「…はい、牛乳で作っています。牛乳はチーズやバターに加工するのですが、それだけでは余ってしまうことが多く、チーズ以外の加工品を増やす努力をしていたのです。これだと冷凍さえすれば、かなりの日数保存可能です」

「そうか、確かに牛乳は保存がききにくいからな。王都では高級品だ」

「そうです、殿下。わが領の搾りたての牛乳は絶品でございます。低温でゆっくりと殺菌をしていますので、とても甘いのです」

 そう言って、父が差し出した牛乳を殿下は毒見を通さず飲んだ。信用してくれているのだ。まぁ、毒が入っていても5柱の神の加護が守ってくれるはずだけど。

「甘い…こんな牛乳、初めて飲んだよ」

 殿下は一気に牛乳を飲んでいた。私も飲んだが、相変わらず美味しい。

 6歳になるまで毎朝飲んでいた。身長が大きくなるよ、と言われていたのに結局私は女性の中でも、身長が低い方だ。まだ成長期なので、ここにいる間は毎日飲もうと思う。


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