第42話 夏季休暇に入りました
王宮に帰ると、白猫姿のララが不貞腐れてジタバタしていた。
『アロイスのくせに、ちゅ~、ちゅ~~⁈』
猫なのにネズミみたいな口調になって暴れていた。
雷は遠慮しておいた。
あの事件は、殿下がはっきりした態度でミランダ様と対峙したこともあって、すぐに終息したようだ。平和な学園生活がおくれて幸せだ。聖薔薇の世界を存分に満喫することができ、夏の休暇が始まる前には友達もたくさん増えた。
殿下が嫉妬するのでは?と、ロイド様とシャルくんが心配したけど、私が愛情を示したことで自信がついたのか、アロイス殿下の精神状態も安定したようだ。
ほんの少しの嫉妬で済んだことを寂しく思える私も大概だ。
攻略対象のチャールズ様だが、リリアーナと婚約が決まっていたため、学園には先生として赴任してこなかった。たまに、臨時講師としてやってきてはリリアーナと楽しそうにランチをしている。普段は殿下の側近として王宮の執務室にいるらしい。
どうやら、ここでもストーリーが変更になっているようだ。残りの攻略対象の天才魔術師ルルーシェ・ブラック様は、たまに学園で見かけるのだが、どこのクラスかなど不明な点が多い。王宮の廊下でララと喧嘩しているのを見かけたこともある。本当に謎多き美少年だ。
そして、学園の夏季休暇が始まった。夏の暑い間は、領地に戻ったり、避暑に出かける貴族が多いため、学園も休みになるのだ。
休みの前半に兄たちの結婚式があるため、グラン領には明日から帰ることになっている。後半は、リリアーナの実家、ホワイト伯爵家の領地に遊びに行く約束をしている。貴族から人気の避暑地で美しい湖が有名な場所だ。もちろん視察と称して、殿下も同行する。
チャールズ様とロイド様もホワイト領には同行する。
『束縛男のどこがいいにゃ~』
と文句を言いながらも、どちらにもララは同行するらしい。雷に注意だ。
シャルくんも、久しぶりにグラン領に行きたいと言っていたのだが、従者の人たちが必死で帰国するよう懇願したので、隣国へ夏季休暇の間、帰ることにしたみたい。従者の人も家族に会いたいよね。
「マリア、僕のこと忘れないでね。お土産買ってくるから」
と、言い残し去っていった。