第39話 断罪ルートに入っているようです
「ええ、シャルくんと私が愛し合っている⁈ 何、なにが?どうして??」
放課後、リリアーナと教室に残って話すことにした私は、リリアーナからジロジロ見られている原因を聞かされていた。どうやら、休憩時間シャルくんと話している途中に貧血を起こし支えてもらった姿が、抱き合っているようにしか見えなかったらしい…。確かにあの時まずい状況だと把握していた、でも貧血で動けなかったのだ。
さらに、所謂お姫様抱っこで医務室に運ばれた姿も複数の生徒に目撃されていた。あれを愛の逃避行だと言われていたのだ。いや、行先は医務室だ。リリアーナにはちゃんと説明をした。そして、実は殿下のことで悩んでいることも打ち明けた。
「そうですか、どう思っているのか分からない。そうですわね、なかなか難しいですわね。貴族ですから政略的な事もありますし、恋愛イコール結婚ではないですものね。特にマリアは幼いころからずっと殿下と共にいますし、きちんと気持ちに向き合うのは歴史も長いぶん大変ですわね。それにしても、最近の殿下の態度はいかがなものかと思いますの」
そう言って帰っていった。リリアーナに気持ちを打ち明けられて、少しすっきりした。ありがとう、親友最高。この時は明日から頑張ろうと思っていた。貴族の本質、噂の怖さを軽く考えすぎていた。
翌日も、殿下は先に行ってしまった。一人登校した私は、教室に向かって歩いていた。
「え…」
目の前でパシャッと水が弾ける。女神の加護で私は濡れていないが、どうやら誰かに水をかけられたようだ。ふと既視感に襲われる。転生前の記憶だ。
ガシャンと隣で植木鉢が割れた。これも加護で避けた。でも、恐怖は避けられない。ガタガタと体が震える。断罪ルートだ。
どうして、私何か悪いことをした?震える体を支えながら必死に考えた。その時、聞き覚えのある声がした。
「まあ、どうされまして?マリアローズ様」
エラン侯爵家のミランダ様だ。取り巻きの令嬢が3人後ろに並んでいた。
「女神の愛し子様は加護に守られ、アロイス殿下ばかりか、隣国のハリス公子にまで守られて、羨ましいですわ~ホホ」
「!!」
息が震えて言葉が出ない。悪役令嬢ミランダが私を断罪するの?これは何ルート?また、私死んじゃうの?何が正解?
呼吸がだんだん苦しくなる。息を吸っているのに、まるで溺れているみたいに苦しい。もう何をやってもダメなら、そう考えた時、温かい何かに包まれた。いつも知っている匂いがした。アロイス殿下?