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第27話 side王太子アロイスの憂鬱

 15歳になった僕は、陛下より正式に王太子となることを認められた。立太子の儀は神殿で行われた。女神の愛し子であるマリアも参列してくれていた。

 ああ、やっとだ。これでマリアは正式に僕のものだ。


 産まれてすぐに、女神の愛し子であるマリアローズが僕の婚約者と決められた。当然だ、国の宝である女神の愛し子は、王族が後見もしくは婚姻などで保護することが慣例だからだ。第一王子として生まれた僕の婚約者になったのもそういう事だ。

 その当時、会ったこともないマリアローズになんの感情もなかった僕は、別に王太子や王になることも興味がなかった。何かあれば4歳年下の第二王子アレクシスがいるしいいだろう。くらいの感情だ。

 そんな僕の考えが変わったのは、女神の愛し子としてマリアが王宮に来て半年ほどたった頃だ。初めて会った彼女は木の陰で泣いていた。その泣き顔を見た瞬間激しく胸が痛んだ。その時はその感情に驚いたが、今なら分かる。その瞬間に僕は運命の恋をしたんだ。

 そこからは必死だった。どうでもいいと思っていた王太子という肩書を、何としても手に入れないといけなくなった。女神の愛し子は王太子と婚姻を結ぶのだ。きっと弟のアレクもマリアが好きだ。いつもマリア姉様と言って小さい頃から後を追っていた。

 誰にも渡せない、僕のものだ。そう思って王太子、将来の賢王となるべく努力してきた。いくら天才だと言われ、それなりに出来ていても、完璧にマリアを手に入れるためあらゆる努力をした。10歳の時マリアが目の前で襲われてからは、騎士団に交じって鍛錬もした。今では団長と互角の腕前だ。


「アロイス王太子殿下、本日は立太子の儀おめでとうございます」

 神殿に立つマリアは、古代の女神様のような衣装だ。可憐な彼女によく似合っていた。

「ありがとう、マリア。これで正式に君は僕の将来の伴侶だね。これからもよろしくね」

 頬を薄っすらピンクに染めて、頷くマリアを抱きしめたい気持ちでいっぱいになる。だめだ。急に抱きしめたり、その先へなんて可愛いマリアを怖がらせてしまう。どこまでが正解なんだ?婚約者なのだから少しくらい……いや、だめか??


「殿下?」

「ああ、そうだ、今度の立太子の儀と成人を祝う舞踏会用のドレスが出来上がったんだ。あとで、部屋に届けさせるよ」

「いつも素敵なドレスをありがとうございます」

「マリアを着飾らせるのは僕の趣……、僕の役目だと思っているんだ」

 あぶない、可愛いマリアを着せ替えるのが趣味だと素直に言ってしまいそうだった。さらに、送るドレスはどれも僕色だ。マリアに手を出す奴なんて表立ってはいない。でも歳を重ね、可愛かったマリアは大人の魅力も兼ね備えだした。紫と黒をまとわせて牽制するくらい許してほしい。

 きっと、今のマリアを舞踏会に出したら、視線をさらうほど魅力的なのだ。僕のマリアをほかの男が見る⁈考えただけで目の前が真っ赤になりそうだ。いっそのこと何処かに閉じ込めて一生僕だけを見てくれたらいいのに。


 舞踏会の会場には別々に入場していた。マリアを探していると、リリアーナ嬢と一緒にいるのを見つけた。

 二人の周りには、チラチラと視線を送っている男たちがいる。女神の愛し子だと気づいていないのだろうか?今にも声をかけそうだ。少し速足でマリアのところへ向かった

「僕のマリア」

 少し大きな声で周りを牽制しながら、手の甲にキスをした。王太子の僕に気づいた男たちは、自分が声をかけようとしたのが誰か気づいたようだ。少し距離を取ってこちらをうかがっている。危なかった、マリアの目にほかの男が映るなんて耐えられない。


 ファーストダンスでは、さらに周りの視線が気になる。僕色のドレスを着たマリアがふわりとターンする度に男たちがうっとりするのだ。マリアは視線に気づいていない。苦手なダンスを一生懸命踊ることに必死なのだ。その姿がまた愛しい。もうこの会場からさらってもいいだろうか?

 今夜はマリアとだけ踊りたかった。しかし、王族の義務としてほかの令嬢を誘って踊らなければならなかった。それでもマリアが嫌がるならマリア専用になるのはやぶさかでない。そう思っていたが、あっさりマリアに送り出されてしまった。

 やっと義務の令嬢たちと踊り切ったあとマリアを探すと、人気のないバルコニーに一人でいるではないか。こっそりマリアを見ている男もいた。思わず少しきつい口調で注意をしてしまった。素直に謝るマリアが可愛い。

 仕方ない、少しのお仕置きで我慢するよ。僕は最後にダンスを申し込んだ。ここの会場にいる男たちにマリアが誰のものか判らせるためだ。

「はい、喜んで」

 僕の思惑に気づかないマリアは素直に了承してくれた。そして1曲踊り終えた後に、断れないように理由を付けて続けてあと2曲踊った。

 マリアは3曲続けて踊るのは、婚約者や夫婦なら当たり前だと思っているようだが、この国で3曲続けて踊るのは、より親密な関係になってからだ。

 3曲目が始まり一回目のターンをした時、少し焦った顔のチャールズと目が合った。すごく嫌そうな顔をしていたから僕の意図に気づいているのだろう。

 結婚するまでちゃんと我慢するんだ。これぐらい可愛いもんだろう?


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