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第24話 15歳になりました

見事なシャンデリアが目を引く王宮の大ホールには、至る所に国花である薔薇が飾られ、楽団が素晴らしい演奏を奏でている。夜なのに煌々と明かりが灯るホールには、着飾った人々が続々と集まっていた。


今日はアロイス殿下が、15歳になり立太子されたことを祝う王宮舞踏会の日だ。

毎年この時期に、成人した貴族の子弟、子女のために王宮で舞踏会が催される。この国では成人は15歳とされているので、貴族はこの歳にデビュタントをする。

今年は、立太子され王太子となったアロイス殿下が、初めて舞踏会に参加するためいつもより規模が大きくなっている。

成人すれば、夜開かれる舞踏会に正式に参加が認められる。私も、今日デビュタントする。半年以上かけて舞踏会で着る白いドレスを作った。デビュタントの時は白をまとう決まりなのだ。

アロイス殿下が送ってくれたドレスは白を基調としたシフォンドレスで、裾に紫の糸で見事な薔薇の刺繡が施され、たくさんのアメジストが縫い込まれていた。腰の部分は紫のサテン生地で大きなリボンをつくり可愛くアクセントになっている。

出来上がったドレスを見た白猫姿のララは、『にゃ!アロイス色しかにゃい…。』と呆れていた。

髪はハーフアップにして、紫の生花を飾っている。これもデビュタントの証で、色は決まっていないが、どこかに薔薇の生花を付けるのが決まりになっている。


「マリア、本日はおめでとうございます」

リリアーナがやってきた。今日は白いマーメイドラインの大人っぽいドレスを着ている。最近のリリアーナは、美しさが増しましなのだ。サラサラの見事な金髪を綺麗に結い上げ、チョコレート色の薔薇を飾って、胸元には大きなブラウンダイアモンドが輝いている。

「まあ、リリーこそ、デビュタントとご婚約おめでとうございます」

「ありがとうございます。正式な婚約式はまだですが、決まりましたらマリアには是非参列していただきたいですわ」

そう、びっくりしたのだが最近リリアーナが婚約したのだ。それも相手は、テーラー侯爵家の次男。成人して王太子となったアロイス殿下の側近に正式に決まったチャールズ様だ。

そう、聖薔薇の攻略対象者の一人だ! チョコレート色の髪色、目は薄茶色、リリアーナの胸元で輝く大きなブラウンダイアモンドは、彼から送られたものだと言っていた。

定期的に王宮でリリアーナを招いてお茶会をしていたが、最近のお茶会でこっそり打ち明けられたのだ。どうやら、恋のキューピッドは私のようだ。

「初めて会ったのは、マリアにカードをもらって参加した子供たちを集めたお茶会ですわ。あの時は素敵な方だと思いましたが、何もありませんでしたの」

いや、あの時私たちは8歳だ。チャールズ様は18歳。何かあれば犯罪だ。

お茶会で私と別れて、父親を捜したが見つからず迷子になっていたリリアーナを、颯爽と現れ助けたのがチャールズ様だった。リリアーナの初恋の始まりだったらしい。

普通なら接点のない二人だが、私がせっせとお友達作戦よろしく王宮にリリアーナを招いていたため接点が増えた。たしかにお茶会の途中で、無理やり殿下が参加することがあった。付き添いでチャールズ様も同席していたのだ。なるほどである。

「お茶会に殿下が来られると、どうしても一人になりますでしょう」

殿下がお茶会に来ると、何故か私はほとんどアロイス殿下と話すことになる。そうすると、リリアーナが一人になり困ってしまった。そこで、チャールズ様が一緒に会話に参加してくれるようになったのだ。

「最初のうちは、素敵な年上のお兄様のような存在だったのですが、成長と共にその思いが恋だと気づきましたの」

いつからかは怖くて聞けなかったが、今は15歳、もう成人だ。結婚は18歳で学園を卒業してからだと言っていたから、私も断罪を回避して幸せな二人を祝福したいと思う。


「僕のマリア」

そう言って殿下は手の甲にキスをした。

「アロイス殿下、本日は立太子され成人を迎えられましたこと、お喜び申し上げます」

「ありがとうマリア。こんな素敵な子が僕の婚約者で嬉しいよ。マリアもおめでとう」

二人で微笑みあっていると、周りからほぅとため息が漏れる音がした。今日の殿下は別格に素敵なのだ。デビュタント用に白い礼服用の騎士服を着ている。飾り多めだ。胸ポケットには空色の薔薇が一輪。私の瞳の色だ。

私が襲われて以来、殿下は剣の鍛錬を欠かさず行い、今では近衛騎士団に交じっても負けない腕だ。ここ最近ぐっと身長も伸びて、目線が同じだった頃が嘘みたいに見上げないと目が合わない。可愛い天使だった殿下は、美しい青年になってしまったのだ。

最近は公務も増えたのだが、訪問する場所では必ず黄色い悲鳴が上がるらしい。街では、殿下の絵姿が売られ、新作が発売されるたびに長蛇の列ができるらしい。ここまでくると前世のアイドルだ。さすが私の推しである。


「そろそろ陛下からのお言葉がある。前までエスコートしても?」

「はい、よろしくお願いいたします」

アロイス殿下はそっと私の手を自分の腕にかけてくれた。本当に恰好良すぎて困ってしまう。叫んでいいですか。


ドキドキする胸を落ち着かせ、冷静を装いながら陛下の御前までやって来た。



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