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第22話 side男神ルールの回想 その①

 自分は女神ラーラが誕生する時に、この世界に誕生した双子のような神だ。

 自分と違い、純粋で少しボケたところも可愛いと思えるほどには愛していた。ずっと一緒にいたい、自分の側に縛っておきたい。そう思っていた。

 そんな時、ラーラが今の平和すぎる世界が息苦しいと言い出したのだ。



 はるか昔、この世界の5つの国は、互いに憎しみあい戦争を繰り返していた。国中の土地が血で染まっていると言っても過言でないほどに。度重なる戦いで、5つの国の人口は5分の1にまで減少していた。

 長い間、神は人間に対しても戦争に対しても無関心を貫いた。人をそれほど愛していなかったのだ。それでも人間が今の世に絶望し、心から神に助けを求め祈った時に、神々は初めて耳を傾けた。

 5柱の神が、5つの国を守護すると約束し、それぞれの国に浄化の花を授けた。長く続いた戦争は土地を穢し、そこに住まう動物も作物も弱らせた。人間が住める限界をむかえていたのだ。授かった花は穢れた土地を浄化していった。初めは黒一色だった花は、土地がよみがえるごとに色とりどりの花へ変わっていったのだ

 守護の約束をした神は、その国の神となり神殿に祀られた。その時、神と約束を交わした人間がその国の王となり、人々は平和を祈り神に感謝を奉げた。


 それから何百年も平和が続いている。神は気まぐれに愛し子を見つけ、その子に加護を与えた。確かに退屈だった。変わらない平和な日々は、神にすら長すぎたのだ。


 少し気まぐれで自由な女神ラーラは、突然思いついたのか、自分の半神を残し異世界へ半神を転生させたのだ。自分が気づいた時にはすでに遅かった。

 地球という星の、日本という国だった。自分はすぐにラーラを追跡した。見つけた時にはすでに人間の腹の中で誕生するのを待っている状態だった。気が遠くなった。

 そして、ラーラが成長して会話が成り立つ頃に連絡をとった。

「あ~ルールの声が聴こえる~。何?なんでスマフォから?電話番号知ってるの??」


 どうやらこちらの会話は、あちらのスマフォ??というものから聴くことが出来るようだ。電話番号?よく理解できない。

「ねぇ元気~?こっちは~メチャクチャ忙しい!!」

 少し疲れた声でそう言っていた。こちらが退屈だったから、あちらの世界のブラック企業に入社したと言っていたが、何のことか分からない。

「ん~死ぬほど働く場所だよ~」

「そこで乙女ゲームを作ってるんだ~。やっと完成して配信スタートしたのに、もう次の続編を作るって~最近ほとんど寝てないの~。神は寝なくても存在できるけど、人間は寝ないと死ぬんだよ~」

 少し間延びした言葉が聞こえてきた。言っている意味は解らないが、死ぬほどしんどいならこちらの世界に帰ってきたらいい。と伝えた。

「そうだね~考えとくよ~」


 自分は、こちらにいる半神ラーラのことも気にしていた。気まぐれで自由な本来のラーラは、どうやらあちらの異世界に行ってしまったのか、こちらのラーラは少し暗い性格になっていた。毎日地上が映る水鏡をのぞき込んでいた。それでも時々フラリといなくなる。どうやら地上に降りているようだ。気になった自分はこっそり後をつけた。


 地上に降りたラーラは人間の姿に化けて森の中を進んでいく。どうやら目的があるようだ。森の木陰からこっそり隠れて、人間の男を見ているようだ。

 男は身分が高そうな服装していて、自分も見覚えがあった。そうだ、ラーラが守護する国の王太子だ。

 王太子は、見事な赤髪の美しい娘を連れていた。きっと恋人か、婚約者なのだろう。

 ラーラは木陰から悔しそうに二人を見ていた。まさか、ラーラは王太子に恋をしているのか⁈信じられなかった。神が人間に恋を???

 もしかすると半神になってしまったラーラは、不安定な精神体になっていたのかもしれない。不安はあった。でもこの時は、この事実を軽く考えていた。こっそり見ているだけなら、それほど気にしなくてもそのうち落ち着くだろう、と思っていたのだ。


 この時の判断を自分は後悔することになる。少したって自分が気づいた時にはラーラの外出頻度が多くなっていた。不安を覚えた自分は、もう一度後をつけてみた。

 驚くことに、人間の姿に化けたラーラが王太子と腕を組んで歩いているではないか⁈だが、楽しそうに微笑むラーラに対して、王太子の目はどこかボンヤリと空ろに見えた。もしかしたら……いや、あれは幻術を使っているのだろう。人間の心を操るのは神であってもタブーだ。このままではラーラは闇に堕ちてしまうのではないか……


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