第1話 断罪崖落ち死亡エンドですね
「マリアローズ・グラン伯爵令嬢、貴様は長きにわたり自分こそ女神の愛し子だと偽り、王族と国民を騙し続けていたばかりか、真の愛し子であるリリアーナ伯爵令嬢を迫害していたそうだな。そのような者と婚姻する気はない。婚約は解消し、アロー修道院へ追放とする」
怯えたふりをするリリアーナを大事に腕の中に隠しながら、アロイスは私に冷酷な瞳を向けた。対面していた私の角度からは、薄っすら口角の上がったリリアーナの顔がしっかりと見えた。
卒業を祝う舞踏会で婚約者の私を断罪したアロイス・ジョン・ローズウェル。この国の王太子のセリフだ。そう、セリフなのだ。何度も見たシーンだった。正しくは人物の名前が反対であったし、私は自分のことを女神の愛し子だと主張した覚えも断じてない。生まれながらに愛し子だと、そういう設定だったのだ。
だって私はこの国の、いやこの乙女ゲーム[聖なる薔薇と5カ国物語]のヒロインのはずだから!!
―――先ほどまでのモヤがかかった思考が一気にクリアになる。
ちょっと待った~!と叫びたい。
何故悪役令嬢のリリアーナがアロイスと結ばれて、ヒロインのマリアローズが断罪崖落ち死亡エンドになっているのか?逆だよね⁈
いや、それよりも何故私がマリアローズになっているのか?
記憶が正しければ、私は西野真理という名で、乙女ゲーム[聖なる薔薇と5カ国物語]をこよなく愛する何の変哲もないただの会社員だ。
会社を終えて帰宅途中、今夜も推しのアロイスを攻略する予定だった。確かあと数日で24歳になっていたはずだ。ただ、その歳以上の記憶が無いので残念ながらそこで死亡したのかもしれない。
これは前世の記憶をもった状態で転生したということでいいのか?
大好きだった乙女ゲームの世界に転生したことに気付くと同時に死亡エンド⁈だなんて私にどうしろというのだろう。
すでに詰んでる。と思うのは私だけだろうか?