第16話 転落事故を阻止しましょう
「リリー、今日はお招きありがとうございます。こちら王宮のシェフが作ってくれたクッキーです。家族の皆様と召し上がってください。あと、これはエリザベスちゃんにウサギのぬいぐるみです」
「まあ、可愛いウサギですわ。クッキーもありがとうございます。さあ、奥のお部屋にご案内しますね」
今日は、室内でのお茶会を希望した。庭でお茶を飲んでいる間に転落事故が起こってしまっては意味がない。異母妹のエリザベスの近くでしっかり見張るつもりだ。
通された部屋は可愛らしい子供部屋だ。お茶会をするにあたり、場所はエリザベスの部屋でしたいとお願いをした。赤ちゃんが好きなのでずっと側にいたい。とかなり無理やりな理由だったが、異母妹が大好きなリリアーナは疑問に思わなかったようだ。
「この子が異母妹のエリザベスです」
エリザベスは、緩いウエーブがかった茶色の髪に少しつり目な赤い目をしていた。
「まあ、可愛いですね。リリーにそっくりじゃないですか?」
「うふふ、髪は義母なのですが、目は父の色なのです。私も父の色で、つり目も父なのです。私の髪色は亡くなった母の色ですが、雰囲気は姉妹で似ていますの。不思議ですよね」
ふふっと嬉しそうにリリアーナは笑った。この幸せそうなリリアーナを絶対に不幸にはしたくない。事故は必ず阻止しよう。
和やかにお茶会は進んでいった。エリザベスには乳母がついていたが、エリザベスが寝たので席を外すようだ。
「お嬢様、少しお願いしてもよろしいですか?」
「ええ、いいわよ」
このタイミングは事故直前の状況と酷似している。確か寝ていたエリザベスが、物音にびっくりして起き、ベビーベッドから落ちるのだ。
ただ、前回は乳母が離れた時に私たちはいなかった。
すやすやとエリザベスは寝ていた。乳母が離れて少し経った時だった、窓から差す光が陰ったような気がしてそちらを見ると、バンッと何かが窓にぶつかった。黒い鳥のようなものだ。私は慌ててエリザベスのベッドに近づいた。音に驚いたエリザベスは激しく泣きながらベッドの柵の方へ身を傾けた。私はしっかりベッドの柵を押さえた。遅れてリリアーナがたどり着きエリザベスを抱き上げた。
無事に転落事故は防げたようだ。さっき窓に当たった黒いものは何だったのだろう?その後、窓の外を覗いたが何も見えなかった。ベッドの柵が外れやすそうだとしっかりリリアーナに伝えておいた。これで今後も転落は起きないだろう。