SS お見合いがしたいです⑤
『そうにゃ、その子はアロイスに似て魔力が高いのにゃ。魔力が暴走しないように特殊な魔石を加工して指輪にしてもらったにゃ。これを着けていたら出産まで安定するのにゃ』
「そうか、魔力が高いのか……私の時も母が苦労したと言っていた。自ら母を気遣うとはお腹の子は優しいのだな」
『う~ん、この子はかなり暴れん坊にゃ。押さえられるのはアロイスだけかもにゃ。覚悟しておいた方がいいのにゃ』
「そうか、暴れん坊か。楽しみだな」
『楽しみにゃ。アロイスが苦労するのが』
「もう、ララったら」
『この子はマリアが大好きにゃ。きっとアロイスと取り合いになるのにゃ。今から楽しみなのにゃ』
ララはそう言うと、お菓子が置いてあるテーブルに行って、チョコレートケーキを食べだした。テーブルで事の成り行きを見ていたシャルくんが、ララを見てため息をついた。
「君は相変わらずチョコが好きなんだね」
『シャルル、久しぶりにゃ。幸せそうで良かったにゃ』
「……猫がしゃべってますわね……」
「ああバーバラ、この猫は特別なんだ。気にしたら負けだよ」
優雅に紅茶に口をつけながら、シャルくんが微笑んだ。
7か月後、無事に元気な男の子が産まれた。アンドリューはララの予想通り魔力が強く、よく魔力を暴走させた。私がいないと泣き叫び、その度に壁が破壊され、ものが飛び回る。なかなか大変な子育てだが、主にアロ様が対応し、執務の間はララも巻き込み何とか乗り切っている状態だ。
『女神を翻弄するとは……将来が楽しみなのにゃ……』
ボロボロになりながら、ララはご褒美のチョコを頬張っている。
「ありがとうララ。本当に助かっているよ」
『いいのにゃ。マリアが幸せなら、それが一番嬉しいのにゃ』
「うん、私は幸せだよ。最近は転生前の記憶も曖昧になってきたのよ。きっとここが私の生きる世界なのね」
隣の部屋からアンドリューの泣き声が聞こえてきた。物が落ちる音もする。きっと起きた時に私がいなくてご機嫌斜めなのだろう。顔を見合わせたララと私は、慌てて隣の部屋に駆け込んだのだった。
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