SS お見合いがしたいです③
「そうか、それはありがとう」
シャルくんは照れくさそうに微笑んだ。
カーネル王国の王太子夫妻が仲睦まじいのは、ローズウィル国でも有名な話で、情報誌などで、数々の微笑ましいエピソードが掲載されている。
アロ様に抱っこされた状態で、バタバタと手足を動かしてルーク王子の方へ行こうとするティアラを離そうとしないアロ様に、私は微笑んだ。
「そのように無理やり離したら、娘に嫌われてしまいますよ。ティアの気持ちも、ルーク王子の気持ちも聞いてみませんか?」
ルーク王子とティアラが庭を楽しそうに駆け回って遊んでいる。両家が話し合った結果、お互い気は合っているようなので、今すぐは早いが5年ほど様子をみてから、それでも本人たちが婚約を望むならその時に話を進めようということになった。
長男のリアムがそんな二人をじっと見ていた。
「父上、母上、僕もティアのように我儘を言ってもいいでしょうか?」
アロ様と私は顔を見合わせた。
「リアムが我儘なんて、珍しいな。言ってごらん」
アロ様がリアムを見て微笑んだ。ティアラと比べると落ち着きがあり、勤勉な王子が我儘を言うというのだ。
「……僕はキャロリーヌがお見合いをしたと聞いて、それからずっとモヤモヤしていたのです。嫌だと感じた。先日のお見合いは、まだ本格的に進んでいないと聞きました。キャロリーヌを僕の婚約者に望んではいけませんか?」
「まあ、それはつまりリアムはキャロリーヌのことを?」
「自覚したのはその話を聞いてからですが、小さい頃から幼馴染として彼女を見ていました。彼女が誰かのものになると言うのなら、僕でもいいのではないかと……いや、僕のものじゃないと嫌なのです!」
ガシャン、と茶器の割れる音がして振り向くと、キャロリーヌが驚いた様子で立っていた。後ろにはチャールズ宰相とリリアーナもいる。どうやら一世一代のリアムの我儘は、キャロリーヌに聞かれてしまったようだ。
「ど、どうしてキャロがここに……??」
リアムはパニックだ。私は申し訳なく思いながら理由を言った。
「シャルル王太子夫妻が、ルーク王子を連れて訪問するから、年の近い子供が多い方がいいかと思って、キャロリーヌにも来るようにお願いしていたのよ。リリアーナはシャルル王太子の同級生だし、久しぶりに会える機会だから……」