SS お見合いがしたいです②
今回、ルーク王子の初めての外遊先としてローズウィル国を訪問するのは、かなり前から決まっていた事だった。
謁見の間で、アロイス陛下、私の横に長男リアム王子、長女ティアラ王女が立ち、向かい合う形でシャルル王太子、バーバラ王太子妃とルーク王子が立った。
ルーク王子を見たのは今回が初めてだ。でも初めて会った気がしなかった。蜂蜜色の髪も緑の目も、初めて出会った頃のシャルくんにそっくりだったのだ。
隣に立つティアがキャーと小さな悲鳴を上げると、ルーク王子の元へ走り寄った。そしていきなりがばっと抱きついた。そして大人たちが驚いている間にルーク王子の手を取った。
「お父様、ありがとうございます!ティアこの王子様のお嫁さんになります!!」
「はあーー??」
その場が一瞬にして凍りついた。いや、実際に部屋の壁が氷で覆われて、部屋の温度が急激に下がった……隣で8歳のリアムがあーあ、とため息をついた。アロ様はショックで固まって動かない。
バーバラ様は微笑ましそうに見ているが、シャルくんも固まっている。そして目を見開きつぶやいた。
「マリア、そっくりじゃないか……」
そう、娘のティアラ王女はピンクブロンドの髪に、空色の瞳。顔もどちらかというと小さい頃の私にそっくりであった。それもあって、アロ様は娘を溺愛しているのだ。
「アロイス陛下、マリア……いや、ティアラ王女を我が息子ルークへ下さるのですか?」
「嫌だ、絶対にやらん!!これは行き違いだ」
アロ様は全力で否定した。先ほどからティアはルーク王子に抱きついて離れない。ルーク王子もピシリと固まったままである。アロ様は二人に近づいて、べりッとティアラを引きはがした。ティアラは父親の剣幕にびっくりして、今にも泣きだしそうだ。大きな瞳から涙が溢れかけていた。
ルーク王子は、サッとポケットからハンカチを取り出すと、ティアラに差し出した。ティアラは照れたように微笑んで、それを嬉しそうに受け取った。
「まあ、ルーク王子はお優しいのですね」
「あら、こんなことは初めてですわ。きっとティアラ王女を意識しているのですわ。親子ですから好みも同じなのでしょう」
「こら、バーバラ。今は君だけだと何度も言っているだろう。わかっているよね」
「あら、嬉しいですわ」
「……信じてないのかい?」
「いいえ、ちゃんと信じてましてよ。ただ、好みはあるでしょう?わたくしが小さい頃から、ずっとあなたを好ましく思っているのと同じですわ」