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第112話 エピローグ

 私たちを乗せた屋根のない4頭立ての馬車が街の中をゴトゴトと進む。街道を埋め尽くす人たちから、祝福の言葉と共に投げ入れられる薔薇の花びらがひらひらと舞い落ちる。

 今日のために、仕立てられた真っ白い花嫁衣装が太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。初々しい花嫁と花婿は幸せそうに手を振って沿道の歓声に応えている。


 色とりどりの薔薇の花びらが舞い踊る。私は、この光景を絶対に忘れないだろう。

「アロ様、大好きです。ずっと一緒にいてくださいね」

 私は、アロ様にこっそり囁いた。アロ様は不意打ちだったのか、顔を真っ赤にして頷いた。

「マリア、今晩は、寝かせてあげられないかもしれない……」

 アロ様が何か言っていたみたいだけど、小さな声は歓声に消されて私には聞こえなかった。馬車に一緒に乗っているララが、はあ、とため息をついていたのが気になった。疲れてないといいけど。

 

『アロイスのくせに生意気にゃ』

「うるさいぞ、白猫。今夜は邪魔するなよ」

『わかっているのにゃ。そんなに野暮じゃないのにゃ』

 後ろでコソコソと話す二人に視線を向けると、ララが近づいてきた。

『マリア、幸せにゃ?』

「勿論、幸せよ。私を転生させてくれてありがとう、ララ」

『そう、良かったにゃマリア。これで、少しは……』

「ん、何、ララ?」

『何でもないにゃ。幸せならそれでいいのにゃ』

「ずっと一緒にいてくれてありがとう、ララ」

『これからもずっと一緒にゃ』

「いいの?ララ。もう断罪エンドは回避できたと思うけど」

『いいのにゃ、私がいなくなったら誰がアロイスの邪魔をするのにゃ』

「ええ、邪魔をするの?でも一緒にいられるのは嬉しいわ。大好きよララ」

『私もにゃ。私の愛し子にゃ』

 ひらひらと薔薇の花びらが舞う空を見て、私は微笑んだ。



 その後、王太子アロイスは積極的に隣国ユリゲーラ国の王太子ブラッドフォード、カーネル王国の王太子シャルルと親交を深め、のちに王として三国の交易に力を入れ、飛躍的に国を発展させた賢王として歴史に名を残すことになる。

 また、彼の側には常に女神の愛し子である王妃マリアローズがいて、彼を支えたと記されている。愛妻家である王が、片時も側から離さなかったことや、王家のペットとして飼われていた白猫がお菓子しか食べない変わった猫であったことも、合わせて記されている。

 

 王と王妃は、3人の子供に恵まれ、その子供たちもいくつかの偉業をなすのだが、その側には常に白猫がいた、とも伝えられている。 

 また、ローズウィルでは青い薔薇をプロポーズの時に渡すと幸せになると言われているが、そもそもの起こりは、王太子アロイスがマリアローズに青い薔薇を送ったのが始まりである。とされている。


 白猫はマリアローズの側にいて、マリアローズが天寿を全うし、天に召されたのを見送って姿を消し、アロイス王はマリアローズが亡くなると、安心したようにそのあとすぐに亡くなった。とある。

 亡くなる間際に王が語っていたのは、マリアローズに奇跡の御業を使わせないために、元気でいることが彼女との約束だから、これでやっと彼女の後を追える。という言葉だったと伝えられている。

 歴代最強の女神の愛し子、マリアローズが起こした奇跡は神殿の資料に記されている。その奇跡の御業は、死する運命さえも癒せるとあったが、今では神殿が誇張して残したという見解が最も有力な説である。


「何を読んでいるの?ララ」

『未来を読んでいたにゃ。あくまで一つの可能性なのにゃ。知りたいのなら教えるのにゃ。見るにゃ?』

「ええ~気にはなるけど見なくていいよ。あくまで可能性なんだよね。今からの運命だって自分の選択次第で変わることがあるって私は知っているから、知っても参考にならないかな。それより今からお茶にするからララも一緒に飲みましょう」

『今日のお菓子は何にゃ?』

「フフ、食いしん坊さん。今日はレモンケーキだったかしら?」

『大好きなケーキにゃ。アロイスが来る前に全部食べるのにゃ』

「おい、聞こえたぞ、ララ。マリア、ゆっくり歩いて、転んでしまったら危ないよ」

「ふふ、アロ様、大丈夫です。お医者様も安定期に入ったとおっしゃっていました。おなかの子にも適度な運動をするのはいいそうです」

「そうか、でも心配だから気をつけてね」

 手を差し伸べるアロ様の手をぎゅっと握った。幸せそうに微笑むアロ様を見て、私も微笑んだ。乙女ゲームとは違う、ハッピーエンドその後の世界。私はこの世界を大切な人たちと精一杯生きていこう。


とうとうエピローグです。

最後までお読みいただきありがとうございました。この後に番外編3話投稿してこのお話は完結となります。評価していただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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