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第110話 アロイスより愛をこめて

 無事3曲踊り終えた私とアロ様は、バルコニーに避難していた。そのあとのダンスの申し込みが殺到した為、少し時間を空けて申し込みにこたえようという事になった。

 

「マリア、こっちに来て飲み物を飲もう。疲れてない?」

「大丈夫です。この後も踊れます」

「そう、他の男性とはあまり踊って欲しくはないんだけどね。まあ、卒業記念だから目をつぶるよ」

「ふふ、私の体力ではそんなに多くの方とは踊れません。お世話になったチャールズ様とロイド様とは踊ってみたいですが」

「そうだな、その二人ならいいか」

 アロ様が、そっと私に近づいて手を握った。そして、バルコニーの中央にエスコートした。

「アロ様……?」

 そして私の目の前まで来ると、そっと跪いて青い薔薇の花束を捧げた。

「マリアローズ、僕の宝物。君と出会えたのは僕にとって奇跡だ。どうか僕の側にずっといて、一緒に生きてくれないか。愛している」

 

 私は一瞬何が起こったか分からなかった。でもじわじわとこれがプロポーズだと気づいた。リリーやローラ様が嬉しそうにプロポーズされた時のことを語ってくれた。私たちは生まれた時から婚約者だったから、プロポーズされることに憧れてはいたが、諦めていた。それなのに、アロ様はちゃんと私にプロポーズの言葉をくれた。私の瞳と同じ青い薔薇の花言葉は奇跡だった。瞳の奥が熱くなる、涙が溢れて言葉が嗚咽まじりになる。

「……私も、アロイス様を、愛しています。……あなたと、一緒に生きて、いたい」

 そう言って薔薇の花束を受け取ると、アロ様がふわりと抱きしめてくれる。

「ありがとう、大好きだよ、僕のマリア」


 会場中が喜びの声に包まれる。祝福の声に驚いて振り向けば、バルコニーのカーテンは閉まっておらず、みんなに目撃されてしまったのだと初めて気づいた。

 結果的に公開プロポーズの様になり、会場にいた皆に祝福され、この後この話題は広く王都に知れ渡ることとなった。最近では、プロポーズの時に青い薔薇の花束を贈るのが流行っているとリリーが教えてくれた。

 

 この話題は、若き王太子アロイスと女神の愛し子マリアローズの恋物語のエピソードとして、長く語り継がれることになるのだが、それを知るのはまだ先のこと。


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